1話~チェーンネックレス~
純直side
♪~♪・・・
時計塔の鐘が辺りに鳴り響く。
いつもは、この鐘がなると、びっくりするものだったが、
今日は違った。
今日は、僕、水無月純直の好きな小説家の新しい本が発行され、
その本を買うことができたので、
ぼくの心はその本に奪われてしまっていた。
中学1年生なのだから、仕方ないと言えば仕方ないのである。
・・・でも、ラッキーだったなぁ。
今日買うことができたなんて・・・!
一人、そう思いながら、帰路につこうとした時だった。
「あれ?純直?」
透き通るような、さっぱりとした声。
間違いない。
僕の幼馴染の有村有澄美だ。
「有澄美?」
そう問いかけながら、僕は後ろを向いた。
やはり、後ろにいたのは幼馴染の有村有澄美で・・・。
ショートカットの髪の毛に、ぱっちりした目。
いつもの有澄美だ。
「こんな所で純直に会うなんて思わなかった!」
有澄美は、びっくりしたなぁ、とでもいうように、
にこっと笑った。
どうせなら、という事で、有澄美と僕は一緒に帰る事になった。
しばらく歩くと、僕の家と有澄美の家が見えてきた。
僕の家と、有澄美の家は隣どうしで、
とても便利だ。
僕の家の前に着くと、有澄美がふと話を切り出した。
「ねえ、純直。私・・・さ?
今日、骨董品を見に行ったときにいい物あったから・・・
そのついで?で買ってきたの
もらってね」
そういいながら、有澄美はバックの中から小さな包みを取り出した。
「う・・・うん。ありがと。」
中学生で骨董好きとは・・・
大したものだ。
そう思いながら、包みを受け取る。
その瞬間だった。
「!?」
受け取った瞬間、包みが熱くなり、一気に重くなった。
・・・それは、ほんの一瞬だったのだが・・・
「・・・?」
「純直~?どうしたの?」
・・・きっと、気のせいだ。
さっきのことは・・・
「・・・ううん。なにもないよ」
「・・・ふぅん~?
・・・ま、いっかぁ。開けてみて」
有澄美に言われ、
包みを開ける。
中に入っていたのは・・・
「ネックレス?」
チェーンネックレスだった。
「そう」
「私のも買ったの!」
・・・よーく見てみると、有澄美は黄色のチェーンネックレスを
していた。
「じゃーね!純直!!」
有澄美は、満足したように、家の中へと入っていった。
「じゃーね」
・・・家に入ろうかなぁ。
このネックレスが、これからの僕たちの生活を大きく変えるなんて、
僕はまだ知るはずもなかった・・・――