1月30日〜由希争奪戦〜
由希は最近、ゴンタを相手にしなくなっていた。
ずっと仲が悪い同士でいるほうが面白いと思ったからだ。
男子はバカのほうが面白い。それを自分が壊してはだめだ。
それでもゴンタは、由希に必死でアピールし続けた
そのせいで、周りはゴンタと由希がつきあっているという噂でもちきりだった。
1月30日の昼休み、再び事件が起きた。
「星野さ〜ん。」
廊下で直紀が話しかけてきた。
「何?(ドキドキ////)」
由希は直紀が好きなのだ。直紀はほとんど人とは話さないクールな人だ。
その直紀が話しかけてくるといったら、きっと勉強に関係のあることなのだろう。
「星野さん、小野君とつきあっているって、本当?」
・・・。噂は2組にまで広がっていたのだ。
「つきあってなんかいないよ。私は松、・・・何でもない。」
由希は直紀のことが好きだと言いそうになった。そう、あの時ゴンタに言ってしまったように。
直紀の様子を見てみると、由希のことを見つめていた。ゴンタと違って、身長が高い。
「よかったぁ〜。」
直紀が普段人に見せないような笑顔をした。
そのとき、由希の全身に電流のようなものが走った。体が動かない・・・。
「あのさ・・・。」
ゴンタが階段を上って来て、その様子を目撃した。
「実は、僕も星野さんのことが好きなんだ。」
その一言を聞いた瞬間、由希の体が動くようになった。
由希はなぜか泣いてしまった。
「星野さん!?」
由希は直紀に抱きついた。自分が何をしているかよく分からなかった。
直紀も由希を抱きしめてくれた。
ずっとこのままでいたいと由希は思った。
「松林君、ごめんなさい。私、間違っていた・・・。ゴンタに告白しちゃうなんて!」
直紀は由希の言っていることを理解したようだった。
ゴンタは階段のところの曲がり角で、その言葉を聞いていた。ひどく傷ついた様子だ。
ゴンタは2人の様子を見て、目を覆った。
時が止まったような気がした。いや、6年生がこんなことをしていいのかという気持ちかもしれない。
2人の唇が重なった・・・。直紀の鼓動が伝わってきた・・・。
由希の争奪戦は、松林直紀の勝利で終わった。
しかし、ゴンタはまだ由希のことを諦めてはいなかった。
「まっくん!」
2人がキスをやめた時、ゴンタが叫んだ。
由希は真っ青になった。「今の、見られたの?」
「俺は由希を諦めないからな!いつか由希を俺のものにしてみせる!」
本当にゴンタらしくない。こんなことを言うなんて。
「ああ、そうすればいいさ!由希は永遠に僕のものだ!」
直紀も由希を抱きしめ、プライドを捨てたように叫んだ。ゴンタも直紀も狂ったように感じた。
「由希は(僕)(俺)のものだ!」
2人がハモった。(ハモる=同時に同じことを言うこと。)
「由希、行こう。」
直紀は由希を連れて図書室へ向かった。まるでゴンタから引き離すように・・・。