山本家と白透
3人は山本家まであまり喋らなかった。明らかに白透は緊張しているようで、ひ
たすらに道の遠くを見て家路を急いでいるようだった。
琴は無意識に界人の手を握っていた。3人で一緒にいて、こんなにも沈黙した時間を過ごしたのは初めてだ。足音、小石が擦れる音、風の音、葉がなびく音――。
それしか耳に入ってこない。まるで1人きりで夜道を歩いているような不安。
――きっと面倒な事に巻き込まれたと思うはず。
白透はそう言った。
一筋縄ではいかない、複雑で厄介な問題があるのだろう。その問題のせいで、長く人と距離を置き、外界との接触を避ける生活を強いられていた。
(生半可な覚悟で聴くべきじゃない……)
琴はそう思った。そしてきちんと受け止めようと考えた。
白透はやっと色々な話をしてくれるようになった。表情も変わったし明るくなった。趣味も見つけた。
やっと外に出たのだ。
そして、そのきっかけを作ったのは琴だ。あの日、道端で見かけた白透に声を掛けピクニックに誘った。それが始まりだった。今振り返っても後悔はもちろんない。
(だったら、あたしのやるべき事は一つしかない)
琴はずっと下を向いていた顔を上げた。
(まずは話を聞いて、白透の事情を受け入れよう)
山本家に到着すると、2人はクリスマスパーティーをしたあの居間に通された。暖房を入れて座布団を置くと、
「ちょっと待ってて。お茶入れてくる」
白透は口元を僅かに緩める笑い方をした。どこか痛々しい顔だった。
「いいよ。このまま話を聞くよ」
「いいや、かなり長い話になるから。だから足も崩しておいて」
パタン、と襖が閉じられると界人は琴の手を取った。
「大丈夫?」
気遣わしげに顔を覗いている。そんなにおかしな顔をしてるのだろうか?
「変な顔しとる?」
「いや、そうじゃなくて……。顔色悪い」
さらっと頬に界人の指が届く。
「きっと真剣な話になるとは思っとったけど、宮司の言葉で白透の様子が一気に変わった。正直、不安になってきた……」
「界人は白透から、どんな話をするか聞いてた?」
界人は中途半端に首を振った。
「聞いてた、とは言えん。白透のカメラを買いに行った日、色々と話をして……。詳しくはまた話すけど、その時、白透が言ったんよ。『俺が好きになった人には幸せになって欲しい』って。自分と結ばれることは望まなくて、相手が幸せになってくれればいい。そう言ったんよ」
あの時の事を思い出し、界人は顔を曇らせた。
「そんな事ある?まだ20代で未来なんて分からんけど、それでもそれが広がってるのはわかる。なのに自分の幸せを望んでない。想い人ができても、それが叶いそうでも、誰かにそれを譲って想いを隠して身を引くとか……。俺には考えられん」
界人は琴と付き合うようになってからも、自分に置き換えて何度も考えた。界人にはそんな事出来ない。考えられない。現に、今も辛そうな顔をした琴の手を離すこともしたくないのだ。
「そこまでの決意をせんといけん白透の事情が何なのか、ずっと考えとった。じゃから今日、話を聞くのは緊張しとったんよ。宮司の最後の話のせいで、より増したけどな」
琴は握られた手に汗を感じた。
緊張しているのは自分だけじゃない。そう思うだけでも慰めになった。
「あたしが白透を外の世界に引っ張り出した。それを後悔してないし、悪い事したとも思ってない。でも、だからこそちゃんと話を聞かんといけんと思って……。受け止めんとって」
「琴一人が背負い込むことない」
握られた手に力がこもる。
「俺も一緒に白透を引っ張り出した。2人で抱えればええよ。白透を支えて、助けよう」
界人の真面目な目と言葉に、琴は心が救われたような気がした。責任感も辛さも小さくなって、日の光が差したような暖かさを感じた。
「界人は心強いな」
自然と笑みがこぼれる。だいぶ気が楽になっていた。
「聞こう。2人で。白透の告白も覚悟も全部、受け止めよう」
白透はお茶を持って戻ってきた。
テーブルに置くと、2人の前に腰を下ろした。
「長い話になるから、足は崩してな」
そう言うと白透は2人を見た。
部屋は静かで、外の風の音が室内にも聞こえるほどだ。
長い話は彼の溜め息から始まった。
「まずは山本家について説明するな。うちは昔から続く憑き物筋の家で、トウビョウ持ちの家系として知られてる」
「トウビョウ持ち……?」
「蛇憑きの家系の事だよ。憑き物筋には犬とか狐とかあるけど、うちは蛇。代々続く蛇憑きの血筋で、300年は続いてる」
「300年……江戸時代から?」
「うん。分かってるだけの年月だから、もっと長いのかもしれん。蛇憑きの利益は富をもたらしてくれる事。地主とか国を治める家柄なら、昔は大事にされただろうね」
山本家の敷地が広い理由が分かった。代々の財の結果なのだろう。
「もたらすのは利益だけじゃない。代償がちゃんとある。トウビョウ持ちの代償は色々あるけど、一番は蛇の機嫌を損ねると災いが振りかかることかな」
「災い……」
「種類は色々…。ここは山に近いから、地滑りとか土砂崩れとかかな。水場なら洪水とか。住んでる場所によって変わる」
「機嫌を損ねるって、何したらそうなるの?」
「さぁ?蛇の考えてる事はよくわんない…。記録によると山を崩した、井戸を掘った、橋をかけた…そんな理由だった気がする。自然に手を出した時が多いみたいじゃけど、他にも沢山あるから一概には言えない」
白透は他人事の様に肩をすくめてみせる。淡々と話し、まるで感心がないような話し方だった。
「だから、直接土地の管理には携わらないようにしてきたらしい。蛇を祀った神社も建て、出来るだけ災いを避けようとしたらしいけど。それが道通神社ね。山本家が管理しているのはそう言う理由」
「……なるほど。だから宮司がいないんだ」
「そう。でも神社なんて建てたもんだから、別の問題が出てきた。後継者だよ」
白透は苦笑いした。まるで自分の祖先の行いを笑っているようだった。
「神社建立後、後継者の事を考えて初めて分かったことなんじゃけど、トウビョウ持ちの本人は子供を授かれないんだ」
「トウビョウ持ち本人?」
「山本家全員がトウビョウ持ちじゃない。蛇憑きとなった人にはハッキリと印が出てくる」
白透はそう言って、タートルネックを下げた。チョーカーの様に金の輪が見える。
「これがそう。金色の輪が目印。これがある人が蛇憑き本人」
「それ、タトゥーとかじゃないんだ……」
中学の卒業アルバムを思い出す。首に包帯をしていたのは、これを隠すためだったのかと合点がいく。
「産まれた時からある。蛇に好かれてるから、他の誰かを想う事は許されない。何とか抵抗しようと呪いをかけた簪まで作ったけど、完全に効力を消せるわけじゃなかった」
「簪…」
界人はハッとして琴の髪に刺さっている銀細工の簪を見た。白透も静かに琴を見ている。2人の視線に気が付き、琴は呆然とした。今も付けている簪にそっと触れる。
「それがそうだよ。昔のトウビョウ持ち本人が、どうしても一緒になりたい人がいたらしくて。陰陽師とかあらゆる呪術師を頼って作らせたらしい。財産だけはあるからね」
嫌味のようにそう言った。
「彼女にそれを贈って婚姻したけど、結局ダメだった」
琴はゴクリと喉を鳴らした。
「――その人、どうなったの?」
「体のあらゆる場所が腐ったらしい。最初はじわじわと部分的に。だんだんと全身が腐って、やがて死んだって。他にも内臓が食い破られたとか、全身に消えない傷が出て出血が止まらなかったとか、何もない部屋で突然体が引き裂かれたようにバラバラになってたとか……」
「ひっ…」
琴は縮こまった。血が伴う話はすこぶる苦手だったので背筋がゾクゾクし、思わず界人の腕にしがみついた。
「怖がらせてごめん……。分かったでしょ?俺は誰かを想えない。念ため琴には簪を贈ったけど」
視線を落とした瞳には暗い影があった。
「簪の効力は完全じゃない。だから子供は2人以上作ることが義務付けられた。トウビョウ持ち以外が必ず子孫を残していく。トウビョウ持ちは家の財力のために生きていくだけ……」
何とも悲しい掟だ。簪が綺麗だったのはきちんと管理されていただけではない。使い手がほとんど居なかったからだと気が付いた。
「トウビョウ持ちがどこまで想いを募らせたら蛇の嫉妬をかってしまうのか、その線引きが分からない。短期間ならいいのか、手を繋いだだけでもダメなのか、想っているだけでも長期間ならダメなのか……。恋愛感情だけじゃなくて友情や家族愛、それも対象なのか……。ハッキリとは分からない。だからトウビョウ持ち本人は、人生の大半を一人で過ごす。家から出れず、誰とも接触せず、言葉を交わさず……。俺も出来るだけそうしてきた」
白透は机の上に置いた自身の白い手を見た。
「それでいいと思った。俺はトウビョウ持ちじゃけど、山本家の人間はもう俺とばあ様しかいない。俺が死ねばトウビョウ持ちの血は絶える。――やっと終わる」
琴と界人はハッとして思い出した。白透の祖母の言葉。
――今までただ長くあっただけの事。ダラダラとただあり続けた……。今はもう、その意味もなくなった。
――……やっと終わる。長かった――。長すぎた――。もう疲れた……。
痛みを抱えたようなあの時の表情の意味がやっと分かった。
重荷を背負わされたように歪めた表情をした白透の瞳には、強い憎悪があった。まるで自分自身の身体も血も憎んでいるようだった。
「こんな血なんて絶えてしまった方がいい。俺はそう思っとる。財に目がくらんで長くそれが出来んかった。今がチャンスなんよ。どのみち、蛇憑きの俺が結婚した所で相手の命がないし……。それが分かってて結婚しようなんて思わない。恋愛も友情も家族愛の線引きも曖昧なら、誰とも親しくならなければいい。だからずっと家にいた。……苦しくなかったとは言わんよ。孤独だったし、何のために生きてるのか分からんかった。ばあ様が居なくなった後は、自分から……なんて考えてた事もあった」
自死まで考えていたのかと、2人に衝撃が走った。
同じ年月を生きているのに、白透はここまでの困難を抱えていた。
ずっと一人で考え悩み、暗く長い人生が続くことに絶望していた。
そう思うと琴は泣きそうになった。
「結局、そんな度胸なくてしてないけど。他人との繋がりは望んでないのに、孤独にはなりたくない。矛盾しとるよな?人間以外なら良いかと思って、動物を見つけるために外に出ることがあった。トウビョウ持ちの力で、蛇とは会話できるんよ。言葉が話せるわけじゃないけど、考えてる事が何となく分かる。琴と初めて会った時も、蛇と会話しとったんよ」
「そうだったん?」
鼻をすすりながら、目頭をおさえた。
「琴を襲ったマムシね。あのコとの会話を聞かれたかと思って慌てて逃げた。そしたら琴が追いかけて来て、あろうことかマムシを踏んづけたんよ。それで怒ったマムシに噛まれた。……ごめんな、ずっと黙ってて」
そうだったのか。白透を無理に追わなければあんな事にならなかったらしい。
「それからはピクニックしたりお茶会したり……賑やかになった。繋がりを望んでなかったのに、2人にどんどん引き込まれた。困った事に、嫌じゃなかった。退屈な毎日が輝きだして世界に色がついたみたいで、楽しくて嬉しくて……。琴を好きなるのに時間はかからんかった」
琴は心臓がキュッとなった。
痛みを伴うその気持ちは界人に抱くものとは少し違って、切なさの方が大きかった。
「琴をデートに誘ったのは……好きな人と2人きりで過ごす楽しさとか幸せを、せめて一度くらいは味わってみたかったから。一時の自分の幸せを願うくらいは、我儘じゃない……。そう思って踏み切ってみたんだ」
白透は琴を見た。彼の瞳は揺れていてた。
それを見ていると、また琴の目に涙が溢れてきた。
「念ため簪を付けてもらった。何ともなかった?」
琴は頷いた。それしかできなかった。言葉が無かった。
「良かった……」
切なく笑うと、今度は視線を界人に向けた。
「あの日話したよな。琴への想いがあるのにそれを言わない。相手が思ってくれたとしても、断る。これが理由だったんだよ、界人」
あの時と同じ、痛々しさを感じるほどの顔をした。界人もきっと同じ表情をしていたのだろう、
「そんな顔せんでよ、界人――」
白透は言いながら、自身も泣きそうな程に目を揺らしている。
「デートに誘ったくせに、琴から告白されたら断る。そう言った時、界人は怒ったよな。俺を殴りそうな勢いで睨んどったし。当然じゃけど……」
目元を拭うと、小さく嘆息して改めて2人を見た。
「でも、殴ったりせんかった。我慢して俺の話を聞いてくれた。ありがとな」
清々しいまでの顔で笑った。
「俺が琴に願うのは、俺への恋慕じゃない。琴が幸せになること。俺が好きになった人が、幸せになること――。それは叶った。琴の相手が界人だったから、俺は幸せだよ。傍で見守っていられる。2人の幸せを横で見ていられる。それがこれ以上ないくらいに嬉しいし、幸せなんだ」
白透はこれ以上ないくらいに破顔した。輝き出しそうなほどに眩しい笑顔だった。
琴は耐えきれず、涙を溢した。溢れて頬を伝って畳に落ちてはシミを作った。
悲しい笑顔にしか見えなかった。こんなにも辛く切なく悲しい笑顔を琴は知らない。
界人は琴を引き寄せて肩を抱いた。界人自身も目が潤んでいたが、一つ聞きたい事があった。
「白透、聞いてもいい?」
「うん」
「高杉宮司が言ってた事……。白透じゃない誰かを幼い頃から見かけてた話……。思い当たる節があるって言ったよな?あれは――なんだったん」
「うん……」
白透はまた視線を落とした。今度は怯えたような表情になった。
「本当はな、俺には兄がおるんよ……。双子の兄」
「双子?」
「そう。今はおらん……。もう何年も前から……」
「――亡くなったの?」
「……そう思っとった。さっきの宮司さんの話を聞くまでは」
琴と界人はドキリとした。
あの周辺で宮司が見ていたのは、白透の兄?
ならば、生きている事になる。家族なら喜ばしいことのはずなのに、なぜそんなにも怯えているのだろうか。
「こんなこと言ったら、2人からは絶望されるかもしれんけど――。真実だから仕方ない。兄の青透は5歳の時行方不明になった。琴と同じように神隠しにあったって、ばあ様から聞かされた。もちろん、探した。――最初だけ」
2人は息をのんだ。その先が見えてしまい、言葉を失った。
「その頃には父も母もいなくて、大人の家族はばあ様だけだった。ばあ様はあまりおおっぴらにしなかった。兄もトウビョウ持ちだったから、生きていても俺と同じ運命を辿る。だから……積極的に探さなかった――」
白透は2人の視線が怖くてギュッと目をつぶった。軽蔑と蔑みの目で見られていると思っているようだった。
実際、それに近い眼差しをしていた自覚があったので、琴はギュッと界人の袖を掴んで視線を床に落とした。
界人も同じで、琴の肩をさらに掴んでいる。
「俺はもちろん嫌だった。一人で外に出て、青透を探した。何回も何日も……。でも5歳児にできることなんてたかが知れてる。俺は絶望しながらばあ様を恨んだ。青透を諦めたくなかったけど、時間だけが過ぎて……。幼い俺にも分かった。青透はきっと――帰って来ない」
白透は絞り出すようにそう言った。
言葉にしてしまえば現実になってしまう。それを恐れているようだった。
「青透の写真は仏壇にはない。ばあ様も飾ろうとはしなかった。青透の事は忘れてないけど、無理に思い出そうともしてない。辛くなるから……。勝手に諦めて捜索もせずに、薄情だとは思うけどな……。でも――もし青透が生きてるなら………怖い」
白透は顔を両手で覆った。肩が震えていた。
「絶対に恨んでる……俺もばあ様の事も…………。俺が青透だったら絶対にそう思う……。合わせる顔がない――。会うのが怖い――。―――でも………探さんと………。もう一回、探さんといけん」
白透はゆっくりと顔を上げた。震える体を無理やり抑え込んでいた。
「ばあ様にも話して、相談せんと。今度こそ青透を見つけて……せめて謝りたい。許してもらうためじゃなくて、家族として向き合うために…………」
彼はくっついて固まっている2人を見た。
2人は言葉が出なかった。
これは山本家の問題だ。他人がおいそれと口を挟めることじゃない。
「ごめんな。沢山話しを聞いてもらった上に、最後に重い話して………。失望したやろ?家族を見捨てた俺らを――」
そんな事ない、とは言えなかった。
青透の事を思うと酷く心が痛んだし、正直薄情だとも思った。
家系の事情があったにしろ、青透の事は探すべきだった。たとえ閉じ籠もって生きる運命にあったとしても、見捨てられ放り出されて、野ざらしで生きていくよりはいい。
界人は言葉にしようか迷った末、ハッキリと思ったことを伝えることにした。
他人から見て山本家がどう映るのか、客観的に伝えようと考えた。
「正直言うと血筋の問題があったとしても薄情だと思うし、探すべきだったとは思う。家族が諦めてしもうたら誰が探してくれるん?」
界人が鋭く、遠慮なくそう言った。
白透は返す言葉もないのか、何も言わなかった。ただ真っ直ぐに界人を見ていた。
「白透もおばあさんも青透の事を探すべきじゃ。今すぐにでも捜索して、残りの人生かけて探すべきだと思う。事情が事情じゃから、他人に頼るわけにもいかんじゃろうけどな……。でも、それだけの事をしたんよ」
「…………そうじゃな」
打ちのめされ、消え入りそうな声で白透は同意した。界人はさらに言った。
「詳細を知っとるものだけが捜索すべきじゃ。俺も少しは手伝えるけど……見つけるなら白透がいいと思う。やっぱり家族が見つけてあげるべきだと思う。まぁ人手はいるじゃろうから、聞き込みとかは手伝うけど」
「手伝う……?誰が………?」
「もちろん、俺が」
白透は驚いて声も出ないようだった。
「時々しか無理よ。おばあさんは高齢じゃし、実質俺と白透の2人になるけどな。黒羽神社周辺から始めたほうがいいじゃろ。宮司さんからも、もう一回教えてもらった方がいいじゃろうな……」
ブツブツと計画を練る界人に、
「なんで手を貸してくれるん?俺にもばあ様にも失望したやろ?」
困惑して白透が尋ねた。
「正直いうと、そうじゃな。おばあさんの気持が分からんわけでもないし、それだけ精神的に追い詰められたんじゃろうけど、それでも孫の捜索はすべきやったと思う。でも後悔がないはずない。今の白透と同じようにな。なら、ちゃんと青透に謝罪せんと。どんな罵声を浴びせられても恨まれても、刺されたとしてもな」
琴は界人を見た。目が怒っている。それでも突き放す色はしていなかった。
「白透はちゃんと話してくれた。約束通り、包み隠さず、言いたくないことも全部話してくれた。その誠意には向き合いたい。だから手を貸す。白透が青透に殴られて地面に突っ伏して、ぺしゃんこになる所を見届けるわ」
最後に冗談っぽく言ったが、白透は涙で歪んで見えなかったかもしれない。
「界人はやっぱリ殴らんな……。もう友達じゃないって、突き放されて終わると思っとった………。琴の一件もあるから一発位は覚悟しとったのに……」
「琴の前でそんな事せんよ。………でも、まぁ。万が一に白透がおじいちゃんになっても青透が見つからんかったら、青透の変わりに俺が殴ってあげるわ」




