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4 監視

オルンとスナイェルは先に森へ。アウルは授業終わった様子で入ってくると、夕陽の差し込む緑の濃い森に三人が集まった。


アウルはじっとしていられないようで、ふらふらしたり木によじ登ったりしている。


「〈フネ計画〉どう思う?」

「あんなもの、ほーっておけばいいじゃん」

「潰したいんだ。主犯を」

「エマは、僕たち強いから大丈夫だと思ってるみたいだけど、実際は互角だと思うよ。スナイェルの言うくらいにはね」

オルンは視線を外す。

「アウルはあの組織のこと、どう思ってる?」

「そうだなぁ、いまいち何が目的かわからないと言うか何というか……胡散臭い!」

「そういえば森の組にはまだ来ていないんだな」

「そうなんだよ!早めに潰しにくるのかと思ったら、後回しと来た!」

裏がありそう

アウルは続けて呟いた。


「オルン!」

いつの間にかエディが現れ、オルンに飛び乗って来た。

「強い人を探してるんだよね!?連れて来たよ!」


「なんで俺なんだ、ほんとに面倒くさい、もうやだ、あーもやだやだ……ぁ」


なんてネガティブなやつ!


「パール!そう暗いこと言うなって」


小柄、黒髪、ピアスが耳にギラギラと付き、目の下にはクマが薄っすらあった。森の組の制服とは異なる服を着ている。


「彼は絶賛反抗期なんだ。察してやってくれ」

「うるせぇ」


パールは肩を組んでくるアウルを押し除けようとした。前髪の隙間から鋭い目つきでスナイェルとオルンを交互に見た。満月のようなゴールドの瞳である。


「パール。〈フネ計画〉の主犯を潰せると思うか?」

「無理。そんな訳で俺が出る必要はない」

「そう言うなって。お前頭切れるし、強いだろう」

「ぇっ……そう……?」


先ほどの鋭さは少し消え、子どもらしさが垣間見える。褒められたからか?

……ちょろいな。

少し気がほぐれたのかエディ、オルン、パールは話し始めた。


「パールは僕達と同い年。面白いやつだよ。以前、〈フネ計画〉の調査で組織に潜入してたこともあるんだ」

アウルはスナイェルの横に来ると、そう言った。


「そうなの⁈あの組織から出るのは不可能と言われているのに?すごいな」

あの雰囲気で潜入調査とは想像もつかない。それとも逆に、あの気怠げな様子は演技なのだろうか?

というか、潜入調査した彼が「無理」と言うなら無理なのでは?と思った。


「さぁね、向こうでの情報はエマにしか話してないみたいだし、エディが裏で奴らと繋がってる可能性もあるよね」


平然と言うな。

「……まずくないの?」


「いや、別に。それなら『追放』すればいいだろう」


さらっと涼しい顔をして言うアウルが怖かった。何となく、追放の本当の意味は聞かないでおこうと思った。


「スナイェルはお友達の復讐をしたいと思っているの?」


「……わからない。でも何もしないで死ぬ前に心残りになるくらいなら復讐を選ぶかもしれない」

「そっかぁ。オルンは君に出会って変わったのかもな。元々他人とか興味ないようなやつだからね」

アウルは乾いた笑いをした。


「アウルは来てくれるの?」

「ついて行くよ。最後まで」


アウルはよく読めないところがある。それでも少し、頼もしさを感じた。


「俺も行きたい!」

エディがオルンに縋っている。

「ダメだ」

「どうして?敵倒せるよ!戦力になるよ!」

オルンは「ダメだ」と一点張り。

「しつこいぞエディ。オルンはお前に、あえて理由を言わないようにしてると理解できないのか?」

「なんだよ!わかんないし!」


「エディには島を守っていて欲しいんだよ」

アウルは優しく言った。

「僕らがいなくなったら島を守る人が減るでしょう?外の人との交渉もエディにしかできない」


「でも……」


「僕達の帰る場所を守っていてくれないか?」


エディは言葉を口でとどめた後、意を結したように頷いた。少しスナイェルの方を見ては、あからさまに嫌そうな顔をした。


オルンが取られるのがよっぽど気に入らないのだろう。スナイェルは特に表情筋を動かさなかったが、少々気分が良かったのは黙っておこうと思った。


鳥の鳴き声は森に響く。すっかり夜空が顔を出し、星と月がまばらに見える。

生き物が動き出したのか、カサカサと草木が静かに揺れ始めた。

「そろそろ校舎へ戻ろうか」

アウルはそう言うと、銃を取り出した。


「何で……銃?」


スナイェルが聞こうとすると、他の皆もそれぞれ武器を取り出し始めた。オルンも銃、エディとパールは短剣を握っている。


「そりゃ生きて校舎に帰るためだ。夜の森は獣が出るって、教わらなかったの?」

エディは嫌味ったらしく言った。


「何か持ってる?大丈夫?」

パールは第一印象と打って変わって、下から顔をジロジロ覗き込みながら、割と心配してくれる。短剣とは別の初めてみる武器をスナイェルの手の中に押し付けた。

「あ、ありがとう……」


「スナイェルなら平気だ」

オルンは港の組で共に過ごした経験から確信を持っているらしい。


「じゃあ生きていたら、また校舎で会おう」

アウルがそう言うと皆バラバラに散り、夜の森へ姿を消した。


「ん?……え?一緒に行くんじゃないの?」

「それじゃお互い、足手纏いになるだろ」

「もと来た道を行くとかは?」

「道は合ってないようなもんだから」

「オルンは一緒に来てくれないの?流石に……校舎の位置もいまいちわからないんだけど」

「多分その武器持ってれば、一人で森を出れる」

そう言うとパールからもらった武器を指差した。


「これは何?石?みたいなのが銀製のくるみ割りにはまってるんだけど」

スナイェルが到底武器に見えないそれを触りながら顔を上げると、オルンは既にいなかった。


「おい!見知らん土地に友人置いてくアホがいるか!?というか、俺は獣とかどうでもいい!虫の方が嫌いだ!」


掠れるほどに大声を出すと、どうも吹っ切れた様子である。静かな森にスナイェルの声が、気味の悪いほどに響いた。


仕方ない、行くしかない。虫に遭遇する前に!

そもそも、そんなにこの森は危険なのか?入ってくる時はその様な気配は感じなかった。


スナイェルは貰った武器を片手に真っ暗な森を慎重に進み始めた。



無論、彼らをずっと見ていたモノがいたことなど誰も知らない。

次はお気に入り回です。

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