12 裏表
10話目の場面と繋がっています
10、11、12話はシーンが行ったり来たりしています
12話は オルン、パール、ミレアのシーンから始まります
◇◇
「……同じ匂い?」
「やっぱり言ってないんだね。君、鏡のところの子でしょう?他人の見た目、性格、声。もろもろ模倣して成り変われるのは鏡頭ぐらいだもん!」
パールの顔がだんだんと、別の顔に見えてくる。
意識的な問題なのか?
じゃあ、本物のパールはどこだ?
少年はそれでもパールの顔をして、怯えた様に顔を上げた。
「なんで……分かったんですか?」
「んー……勘!」
ミレアは自信満々の様子である。
オルンはパールの胸ぐらを掴んだ。
「ちょっと!オルン!」
ミレアは慌ててオルンを止めようと手を伸ばすが、あっけなく払われてしまう。
「おい。パールはどこだ!!」
ニセのパールは青ざめた顔で首を横に振った。
「……分からないです」
「嘘をつくな。模倣した後、あいつをどこにやった?」
オルンはいつになく怒りを露わにしている。
自身の友人を失いたくないという思いはもちろん、これ以上スナイェルの友人を失う訳にはいかないという意思が強いのである。
スナイェルはあの日以来、全くペルラのことを話さなかった。
忘れてしまっているのか、忘れようとしているのか……?
これ以上、彼の精神を壊すわけにはいかない。
「答えろ!!!!」
「言えないんです!……本当にッ」
ニセのパールは地にうずくまって泣き始めた。
それに構わずオルンは髪を引っ張り上げると、喉元にナイフを突き付けた。
「ちょっと!もうやめようよオルン!分からないけど……今ここでこの子を手に掛けちゃうよりは、このまま本物のパール見つかるまで、代わりをやってもらっていた方が良いかもよ!ね?」
ニセのパールを見下ろし睨みつけている。
オルンはゆっくりとナイフを首元から離し、髪から手を一気に離した。
ニセのパールは崩れ落ちるように再びうずくまった。
ぼろぼろ泣いている。
「誰かに言われたとかかな?スパイ的な感じ?話せるとこだけでも、なにか……ない?」
ミレアは背中を優しくさすりながら言った。
誰かに言われた?
どうせ鏡の島に入ったとき俺達に目を付けてきて、あのアギーとかいう奴にスパイとして監視するように仕向けられたのだろう?
それにしては泣き出すなんて……根性のかけらもないな。
オルンは心の中で毒づいた。
ニセのパールはずるずると鼻を啜りながら、小さい声を出した。
「パールさんが無事か……分からないんです、でもボクも弟が……ッ」
「弟くんが?」
また泣き出した。
だいぶ幼い、少年のようである。
パールがこいつの弟を殺したのか?
いや、それならさん付けなんてしないだろう。
となると……
「人質か?」
少年は首を縦に振った。
弟のためにパールに成り代わってまで、俺たちを監視するとは。
「アギーか?」
「いいえ、違うんです……!」
あまりにもか細い声だ。
「じゃああの島の、他の偉い奴か……」
ところが少年は首を微かに横に振る。
「違うの?言いにくいかな」
あの島のやつ以外、誰がいるんだよ?
……いや、待てよ
いるな
俺がパールに違和感を感じたタイミングと、感じなかった頃の境目。
鏡の島に滞在していた時、俺とは別行動をして、パールと一緒に行動してた人が。
「……アウルか?」
少年はうずくまったまま固まった。身震いをしている。
答えは明確だった。
「アウルって?」
「……一緒に来てるやつだ」
「まじかいな!こりゃ内輪揉め不可避だ!」
ミレアは頭の本をバタバタさせる。
薄々気づいてはいたが……あいつ、ヤバいな。
でもなぜだ?パールと仲が悪いようには見えなかったし、そもそもそんなことをしてメリットがあるとも思えない。
だが俺たちに言えない、隠し事であることは確かだろう。現に、口止めをしていたくらいだ。
パールは無事なのか?
「ほらほら、オルンごめんなさいして!」
ミレアが耳元で言う。少年の首に薄らと傷が付いているのを指差した。
決まり悪そうに目を逸らすと、ミレアはオルンの背中を力一杯押した。
「わるい……」
「聞こえん!」
「……悪かった!」
「よろしい」
少年も何か言っているようだったが、鼻声なのと蚊の鳴くような声なので二人は全く聞き取っていなかった。
これからどうするか?
パールを探すには鏡の島に戻らないとであるが、あの島に行くのはなかなか骨が折れる。
かといって、アウルに直接この話をして今仲間割れをするのはリスクが大きい。本来の目的、組織への復讐にあいつ、アウルの力も必要だ。
それにスナイェルがこのことを知ったら……
ダメだ。
アウルには今まで通り普通に接しよう。
コイツにはまだパールでいてもらわないと困る。
「おい。ホンモノを見つけるまで、お前はパールでいろ。ヘマはするな。後あいつは割と警戒心が強いから、なんでもチョロチョロくっついて行かない」
「言い方よ……」
「はい、気を付けます……本当にありがとうございます……!」
パールはようやく泣き止むと顔をゴシゴシ拭いて、オルンを真っ直ぐ見つめた。
「あと……スナイェルの前で言い間違えたくないから、お前の名前は聞かないぞ。パールを見つけた時に聞く」
彼は少し驚いたような顔をして頷いた。そもそも名前を知ろうとしていたことに嬉しさを感じたようである。
ひと段落した二人に安堵すると、ミレアは独り言のように呟いた。
「……そろそろ来ると思うんだけど、まだかな」
「ここに組織を呼ぶつもりか⁈」
「違うよ!君たちが探してる人が、もうすぐ来るはずなの!でも……遅いなぁ」
「知り合いなの?」
少年はすっかりパールになりきっている。
「知り合いというか……師匠みたいな感じ!」
◇◇
スナイェルを担いだアウルは、街の中心部の喧騒からは逃れ、人のいない通りに着いた。
外はすっかり夜になり、街灯の灯りで道を辿る。
アウルは人のいないガラスのショーウィンドウ前にスナイェルを下ろした。
スナイェルは静かに目を覚ました。
辺りの様子を薄ら目で見る。
先ほどの緊迫した空気はなく、不気味なほど静かな所で、離れたところから音がする程度である。
ふと寄り掛かるガラスには自分の姿が映る。
「あれ……?」
彼はようやく、自分の格好がペルラに似ていることに気づいた。
ペルラが最後に着ていた服を選んで着ていたのである。
無意識の自己防衛本能だったのだろうか?
ペルラの存在すら抜け落ちていた彼の脳が再び動き出す。
ずっと忘れようとしていた感情が沸々と湧き、ペルラの顔が脳裏を掠める。
あいつらのせいでペルラが。
町外れにも微かに聞こえる、争いの音にスナイェルは怒りが湧いた。
だがそれと同時。助けられなかった後悔と逃げた罪悪感が巡る。
みぞおちがスッと落ちるような感覚と共に、一瞬で血の気が引いた。
「あ……ッ……あ゙あ゙ぁぁーー!!」
スナイェルは収拾のつかない感情を溢れんばかりに嘆いた。
「スナイェル!」
アウルは泣き叫び始めるスナイェルをなだめようと近づいた。組織や事情を知らない島の軍人が、この声に来てしまうかもしれない。
だがアウルがどう落ち着かせようとも、スナイェルは泣き止まない。
「住人が居たぞ!」
案の定、組織の人間が数人わらわらと、各々武器を持ってやって来た。
「なにが平和な布教だ」と思いながら、アウルはスナイェルを移動させようとした。ところがスナイェルはアウルの手をも払いのけ、縮こまってしまった。
……仕方ない。
アウルは組織の人間を前に、戦闘体制に入った。
男、五人、
銃、短剣、斧、短剣、銃、
団体で戦うことに慣れていない様子、
だが素人よりは動ける、
短剣の男二人走ってくる。アウルは一方の足に銃を撃ち込み体制を崩した。その男から短剣を奪うと、もう一方の背後に周り首を掻き切った。
再び銃で二つの頭に撃ち込み、アウルは残る三人を見た。
銃を持った一人が、急に怖気付いたように叫びながら突進して来る。定めることなく撃ちまくるので、スナイェルに当たらないように銃弾を短剣で跳ね除けた。
そのままその男の胸に短剣を刺すと、男は絶命した。
残りの二人は慎重にこちらを見ている。銃の男は建物の影へと消えた。
斧の男はゆっくりこちらへ近づいている。
「最初から、こうされていたらもっと不利だったなあ」
斧と銃、どちらを相手にしても、していない方がスナイェルのところへ行くと詰みである。
かといってスナイェルの守りに徹するには、後ろに逃げ場がない。
だがあの銃ならそこまで離れた距離からは撃てないのでは?
とすると撃ってくるなら……
二箇所あっちか……ここだ!
アウルは奪った二つの短剣を投げながら、斧の男に走っていった。
短剣が当たり、銃の男の声が漏れたのが聞こえた。
重い斧を振るのには僅かなためがあり、その隙に銃で数発撃ち込んだ。男は撃たれても斧を振りかざし、アウルはギリギリを避けた。
男は痛みながらも斧を振り続ける。
もう一度男に飛びかかろうとすると、目の前を銃弾が横切った。
クソッ!
短剣がちゃんと当たらなかったか!?
再び二対一の構図に戻ってしまった。
スナイェルを背にジリジリとアウルは囲われていくようだった。
どうする?
スナイェルは……まだ戦える状態になっていない。
「その子を静かにさせることは出来ないかい?」
斧を持った男の後ろから、何かを引きずって歩いてくる者が言った。
呆れた、とでも言うような口調である。
その子?……スナイェルのことか。
声の主は、暗さでよく見えない。
斧を持った男が後ろを振り返った途端、一瞬にして倒れた。
速い。
暗闇でよく見えないが、引きずっているのは短剣を投げた銃を持った男であるようだ。
「だれ?」
敵か、味方か。
アウルは尋ねた。
「お前たちが探してる人だよ。こちらから、わざわざ出向いてやったんだ!感謝したまえ!」
……苦手なタイプだ。
アウルは内心そう思った。
登場人物が多くなってきました
また新キャラ
まだ出てきます




