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「あの二人まだ踊ってるのかな」

「戻ってみようか」



二人はやぐらのところへ小走りで戻ると、何やら騒がしい様子である。オルンとスナイェルも見当たらない。


「何かあったのか?」


次の瞬間低く重いホラの音が二度、街中に響いた。


――重い沈黙


その音が鳴り止むと同時に子どもたちは集まり、何軒かある服屋に並んで入って行った。

大人達は武器を用意し始めている。


ガシッ


「君たち一緒に来てくれるかな?」

軍服を着た男が二人の肩をキツく掴んだ。

全く振り解けない。


「ほんと、何事?!」

アウルの方を見ると、冷静な様子である。


「残りの二人も探せ!」

何人かの軍人や市民までもが街に散らばって行った。


どういうことだ?

島に入った時点から目を付けられていたことは理解出来る。だが、あのホラの音と街の慌ただしい様子は、さすがに自分達だけの問題ではないだろう。


それに、島に入って来てから時間が経っている。

なぜ今なのだろうか?

あっちの二人は大丈夫か?まだ捕まってないようだが……


「足落としますか?」

「いや、拘束だけでいい」


すごく怖い話をしている。


「組織の目的は?」

「……はい?」

「はぐらかすな。言え」


組織の人間だと思われている?


「世間でよく言われているようなことしか知らないです。自分達はフネ計画を信仰なんてしていませんよ!」


「じゃあなぜこんなタイミング良く組織が来る?」


なるほど。先ほどのホラは、島に敵が来た合図なのだろう。そして今回は、あの組織。

俺たちがなんらかの手引きをしたと思われている訳だ。


だがこの状態では何を言っても信じてはもらえないだろう。

どうする?


手錠は重く、手首が痛い。


「アウル?なにやってんの?」

二人は顔を上げた。

女がこちらを覗き込んでいる。


「えっと……」

誰?


「……姉貴」

アウルはボソッと呟いた。似ていると言われればかすかに、目元が似ている。


「知り合いなのか?アキラ」

軍服の男が近づいて聞く。

「あー、まぁ弟だよ」


「むしろ怪しいな、お前の弟となると」

と言いつつ男は手枷を取るよう指示した。

友好なのかその逆か。よく分からぬまま解放された。


「何でこの島にいるの?」

「関係ないだろ。アキラこそ何でここにいるんだ?」

するとアキラは肩をすくめて言った。

「それは……分かってない振りしてるってこと?」


アウルの額に指を立てると続けて言った。

「お前が一番。よくわかってるだろ」


アキラは少し笑っている。

それに対し、これ以上踏み込めないような、アウルの冷めた表情にスナイェルは怖気づいた。

一触即発。あんま仲良くないような事言っていたもんな。

だが今はそれどころではない。


「水差して悪いんだけど、その……組織も来てるみたいだし、ね?」


「組織と戦うの?」

いつもの調子でアウルは軍服の男に聞いた。

男は隊長か何かの役職なようで、周りの軍人が口の利き方がなっていないと怒っている。

男は手を挙げ、かまわないと、彼らを制した。

「ああ、賛同しない組は潰される。それは避けねばならない、この島の未来のために」


「らしいから、アウルもお友達連れてこの島出て行った方がいいよ。邪魔なだけ」


「アキラさんはここの島の人と戦うってことですか?」

「そだよ。まだやることあるし」


「あと二人、友人がいるはずだな。彼らを見つけ次第この島から出なさい。そして二度とこの島へは来るな」


きっと悪い人ではないのだろう。

スナイェルは頭を下げると、アウルの手を引いて後ろへ下がった。


だがアウルは動かない。

「エマの知り合い探してるんだけど。あなたがそう?」

おいー!

今はこのまま引き下がるところだろうよ!


辺りは先ほどよりも騒がしくなってきている。

男は動じず首を傾げた。

「知り合いだが……違うな。何が目的かにもよるが」

アウルは躊躇いもなく口を開いた。

「組織潰しだよ!」




「組織を



なんですって?」



聞き覚えのある、この響く低い声。

スナイェルは恐る恐る振り向いた。

不気味な絵。


「クロウ……!」



「何で……ここにいるんだ?」

「お久しぶりです。スナイェル」

クロウは深々とお辞儀をする。


「捕らえろ!」

軍服の男は声を張り上げると同時、近くに居た者たちは一斉にクロウに跳びかかった。

だが軽々とすり抜けては避けられる。


「やはり行儀のなっていない生き物が多いようですね。私はただお誘いをしに来ただけだというのに」


「フネ計画に賛同したんだね?」

初めて会った時もフネ計画を崇拝しているようだった。他にはなんて言っていたっけ?

あまり覚えていないけど、石を回収するとか言っていたような……。

もしや、ここにある石もその対象なのか?


〈岩の組〉の者はうわさに聞いていただけのことはあり、只者ではない身のこなしである上に連携がとれていた。だがクロウもそれに合わせられるほどの動きをしている。


「少しでいいので、お話を聞いて頂けませんかッ!」


一瞬のことだった。

アキラが額縁の下、首らしき部分を両手で掴んだ。

自らよりも背丈のあるクロウの首をアキラは平然と抑えている。


「ッ……あなたともなると、さすがに手馴れていますね」

絵の頭で息という概念があるのかは分からないが、クロウは苦しそうである。

アキラは笑っている。


「おい!殺すなよ!」

「わかってるよー」


その隙にクロウの腕は手枷が付けられ、膝を着かされた。

それでもどこか余裕があるように見えるのはなぜだろう?


「話しても?」


軍服の男はクロウを冷めた目付きで見降ろした。

「良い訳ないだろう。それと……答えはNOだ」


「つれないなぁ」

クロウは残念、と笑う。


スナイェルがふと周りを見渡すと、すでに軍服を着た者とフネ計画の信仰者があちこちで戦っている。

信仰者の中には絵の頭の者もちらほらいるが、多くは人間だ。


エマの知り合いのことも聞きたいが、それどころではなくなってしまっている。

それに、今はオルンたちと合流しないとだよな。


アウルに行くぞと目で合図をするが、こちらを全く見ない。

クロウをじっと見ている。


「もしかしてこの人がそうなの?」


「はい?もう今はいいから!行くよ!」

アウルの腕を掴むと勢いよく駆け出した。



「あれま。じゃあねー」

アキラはひらひらと手を振ると、クロウの隣にドサッと座りこんだ。クロウも「またどこかでお会いしましょう」と小さくつぶやいた。

先ほどの軍服の男はスナイェルの後ろ姿をちらりと見ると、戦乱の巷と化した街に繰り出した。



混沌となっている状況で誰もスナイェルたちを構うものはいなかった。


走って走って走って、走って。


あれ

ここどこだっけ?

懐かしい古い校舎。近くの海からやってくる潮のにおい。



あれ?……足が重い


耳鳴りもする。


「……」


×××が何か言っている

「きこえないよ……」


誰だっけ?



「聞こえる?!ねぇ!スナイェル!立てる?」

アウルは崩れるように座り込んだスナイェルに声を掛け続けた。


目の焦点が合っていない。


スナイェルの足を見た。

どこも怪我をしていない。恐怖で力が入らない、という子ではないけど……。


この場は危ない。

せめて少しでも戦火の届かないところに行かないと。


アウルはスナイェルを背負うと駆け出した。


急にどうしたんだろ?

あの場から逃げ出すように僕のことを連れ出してくれた。

でも走っている途中から、急に何かに謝り始めていた……。

トラウマなのかも。

スナイェルが冷静さを欠くところは初めて見たなあ。



スナイェルを背負いながらも平然と駆け抜けながら、アウルは人気(ひとけ)のなさそうな路地を目がけた。




夕日の姿を隠した夜の空が、戦火を静かに眺めている。


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