第13話 アンヌのお願い(1)
「鑑定魔法ってほんとに日常的に使わないよね〜」
アンヌは、カウンターに肘をついてぼやく。
「それをあんたが言う?ペンダントの鑑定代、まだ貰ってないわよ」
なんて暴言!とマリィは怒る。
ホラン堂は、今日も通常運転だ。
「それに、人を雇うほど忙しくないでしょ?君、うちで働かない?」
アンヌは、店主の前で堂々とルークの引き抜きを始めた。苦笑いをするルークを素早く背中に隠して、マリィは待ったをかける。
「ルークは、私の弟子なの!!」
「まさか、弟子契約なの!?」
アンヌがうぅとうめきながらよろめく。
「なんて契約しちゃったのよ…ウッカリで済む話じゃないのよ…」
分かりやすく落ち込むアンヌを、マリィはまあまあとなぐさめる。
「笑ってる場合じゃない!運命が繋がるってことは、共倒れってこともあるのに!!」
マリィのために必死に怒ってくれるアンヌは、とても優しいと思う。
「そんなこと、絶対させないよ」
マリィの後ろに隠されてたルークがきっぱりと言う。アンヌは、疑い深い目でルークを見た。アンヌは、まだルークを信用していない。というか、二人はさっき顔を合わせたばかりだ。
しかし、マリィはとても気が合いそうだなと思った。
「マリィを危険な目に合わせたらタダじゃおかないわよ!マリィは、ウッカリ者なうえにお人好しすぎるんだから!」
「マリィは、そこが可愛いんだよ!それに僕の大事な師匠だぞ!そんなことするわけないだろ!」
マリィは、困惑しながら二人が張り合うのをみていたが、思い出したようにポンと手をつく。
「アンヌ、こないだのペンダントを買い取らせてほしいの」
アンヌが売り客を見つける前に、これだけは伝えておかなければならなかった。
あくまで今は、預かりものだ。いつまた、店頭に並べようとするか分からない。
「じゃあ物々交換しない?」
アンヌは悪い顔をした。