玉座にて 2
ケイから目を外し、王は黙ってアキの方に目を向ける。
アキはその視線に気づくと軽く頷いて、
「では、次は私から。」
と言って願いを伝える。
「私からの願いは、王を待つ時間を潰すものを、この王の間に配置していただきたい、というものです。」
アキがそう切り出すと、これまでつまらなそうにしていた王の表情がピクリと動く。
その表情の変化を見逃さず、アキは一気に話を進める。
「王のお気持ち、状況は十分に理解しております。ですので、待たされる状況は全く問題と思っておりません。しかし、待っている間、長時間ただ黙って跪いているというのは辛いものがあります。座り方を変えるか、あるいは何か時間を潰すことのできるものを所望いたします。」
そこまで言ってアキは顔を上げる。
王はもうすでにアキを見てはおらず、顎に手を当てながらブツブツと何かを呟いていた。
しばらくその状態が続いたのち、ハハハハハ!と大声で笑うと、
「大臣!今の意見を最重要議題の一つに入れておけ!」
「は?し……しかし、優先度の高い重要議題はまだ数多くございますが……」
大臣は困った顔で進言する。
それでもこうなった王は止められない。
「こういう箸休めがあることで他の議題に対するパフォーマンスも上がるというものだ。いつまでも堅苦しい話し合いをしていられるほど人間は優秀ではない。それに、すぐ近くにいるものの要望すらまともに応えられない者が多くの国民の願いを聞き取ることなどできまい。これは必要な無駄なのだよ、大臣。」
こういう場面でそれっぽいことを言って意見を押し通す能力は高いのがこの国王だ。
実態は職権乱用で仕事を選り好みしているだけなのだが。
大臣も当然この状態の王のことはよく理解している。
肩を落としてため息をつくと、
「……承知いたしました。」
と言ってメモを取り出し、予定を書き加えた。
王はそれを見て満足したのか、大臣から目を外してアキに目を向ける。
「素晴らしい意見感謝するぞ、アキ。」
王は少し微笑み、アキにそう伝える。
アキは
「微力ながら、お力になれたようで幸いでございます。」
と言って頭を下げた。