ラズムの国
隣国、ラズム。
この国の民は、あまり他人を信用しない傾向がある。
特に、他国の者などは人によっては会話すら拒んでくる。
それというのも、隣国であるアザとの長きに渡る戦争の歴史がそうさせたところがある。
諸国との繋がりを意識して国作りが行われたアザと違い、ラズムは他国へ厳しい姿勢をとった。
結果、ラズムの国は自国内での産業が大きく発展したが、豊かになった国で避けられない問題が人材不足。
ラズムは他国の者を受け入れざるを得ない状況へと追い込まれた。
それでも、他国からの移民を受け入れる条件はかなり厳しい。
ましてや、隣国アザの重役など当然顔が割れている。
そんな者達が簡単に入れるはずがない。
の、だが……
「ふぅ……なんとか、入れたな。」
「かなりリスクのある方法だけどね……まだ全く油断はできないよ。」
小汚いフードを深く被って顔を隠しつつ、二人の男がラズムの国を歩く。
数日前までアザの国の剣士団長、魔導士団長候補だった二人だ。
顔を見られるのはマズイ。
だが、そもそもそんな二人がこの国にどうやって入ったのか。
それには実はこの国の裏事情も関係している。
入国条件が厳しいということは、当然入国審査にて弾かれる者が存在する。
その多くは母国へと帰っていったり、別の国へ向かったりするが、中には母国に帰れず、この国にしか当てのない者もいる。
そういった人々が何を考えるか。
そう、不法入国である。
仕事に満足しても、人によっては欲望は収まらない。
金欲しさにそういった人々を手引きする者もそれなりにいる。
そんな噂を元に、何とか二人もこの国に入れたという訳だ。
「追い剥ぎに遭うくらいの気持ちで業者に頼んだけど、馬だけで済んだし、まぁ悪くないだろ?」
「まぁ……ね、あの馬だって、あれだけ質のいいのは中々手に入らないものではあるけど……。
まぁ足元見られなかったのは良しとしようか。」
手引きの値段はピンキリだ。
不法行為をしている以上、罪に問われる危険は付きまとう。
当然、その分金額も高くはなるが、それでも中にはこの不法行為自体を楽しんでいる者も存在する。
そういった場合には、比較的安価で受けてくれる者もいる。
まぁ、その代わりに告発のリスクなども高くはなるのだが。
このように、様々なリスクをはらんでいるこの策。
できれば使いたくはなかったが、この二人ではそんなことも言っていられない。
「そうだな。ポジティブに考えよう、ポジティブに!」
グゥーー
アキがそう言うとほぼ同時、アキのお腹が大きく鳴る。
アキは恥ずかしそうに頭を掻いて笑うと、
「そういえば、今日は潜入にばかり意識向けて朝から何も食ってなかったな。
ーーよし!適当に店入って飯でも食うか!」
そう言って近場にあった小綺麗なレストランに入ろうとするアキを、すかさずケイが引っ叩く。
そしてそのまま襟首を掴まれてアキはケイと共に路地裏へ。
「あー。」
と情けない声を上げながら引っ張られたのち、
「いでっ!」
とすかさず二発目の拳。
「君はバカか!!?向こうの国と同じで、僕たちは有名人なんだよ!
しかも向こうでバレても名誉が傷つくくらいで済むけど、こっちでバレたら逮捕からの処刑からの戦争だ!!
もう少し用心して行動してくれ……!」
「ご、ごめんなさい……。」
正座姿ですっかり小さくなったアキ。
ケイはそんなアキに対して、大きくため息を一つ吐くと、入った路地裏のさらに奥を指差す。
「まぁだからさ、そんな僕らが町で腹を満たすために行く店も、向こうと同じって訳。
さぁ行こうか、僕らの御用達の店へ。」
そう言って、ケイは先ほど指を差した方へと歩いていく。
アキは名残惜しそうな目でメインの通りを見ると、ケイに聞こえないようにボソッと、
「……いっぺん、行ってみたかったなぁ。」
と呟いて、ケイの後についていくのだった。




