エピローグ -残された者達 剣士団-
城内にある、重症者用のベッド。
それなりに大きいサイズであるそのベッドのギリギリまで使い、寝ている大男。
そして、その横に座り、心配そうに大男を見つめる青年。
そう、ヴェインとリュウである。
戦いから数時間。
比較的軽傷であったリュウはすでに治療を終え、ヴェインの元へと来ていた。
ほとんど動かず眠っているヴェインの姿に、リュウの心はかつてないほどに揺れていた。
かつてヴェインがここまで弱っている姿など見たことがなかったのだ。
性格上、部下を守るために身体を張ることは何度かあったが、この強靭な肉体によって大きな怪我になる事はほとんどなかった。
そんな男が、数時間も眠ったまま。
常人ならば当然でも、ヴェインがそこまでダメージを受けるのは異常事態であった。
「ヴェインさん……。」
リュウは力無く名前を呼ぶ。
返事はない。
軍医が言うには、あとほんの僅かでもズレていれば命に関わっていた、ということだ。
魔導士になりたてのアキが、そこまで精密な攻撃ができたかどうかは疑問だが……。
「……いや、アキさんはきっと狙ってた。」
成功率はともかく、それができるだけの知識と経験はある。
そして、アキの性格を考えても、恐らく狙ってはいたのだろう。
そして、それを成功させた。
「俺たちを殺そうとまではせず、それでもしばらくは動けないように攻撃。特にタフなヴェインさんには念入りに……か、ほんと、アキさんらしい。」
そう呟いて笑うリュウ。
だが、その目は全く笑っていない。
「……ふざけるなよ。」
冷たく、呟く。
拳を固く握りしめ、歯を軋ませながら、自身が逃した獲物を思い浮かべる。
何が優しさ、何が配慮。
そんなのは中途半端な戯言だ。
あの場で隙を晒した自分達に油断があったのは事実。
だが、その油断を狙っておきながら、あの場を戦場にしておきながら、敵に情けをかけて生かしておく。
堕ちるところまで堕ちる訳でもなく、かといってこちらに与する訳でもない。
その中途半端さが、リュウには許せない。
「まだ俺は戦士として認められてないって事っすか。
それとも、元でも仲間だからって事っすか。
……甘いっすよ、それじゃあ我儘なガキじゃないっすか。」
自分の夢を叶えたい。
そのために国を捨てるまでした。
にも関わらず、元仲間は殺したくない。
邪魔をされても命は取らない。
聞けば聞くほど我儘で、滑稽に思えて思わず鼻で笑う。
そんな人を、随分と遠い存在として見ていたものだと自嘲もあった。
「……大人になりましょう、アキさん。
俺も、一緒に頑張りますから。」
どこへともなくそう呟くと、リュウはしばらく黙ってヴェインの様子を見ていた。




