エピローグ -王の間 その2-
扉が閉まり、足音が遠く離れていく。
それを確認して、大臣が口を開く。
「王様、良かったのですか?」
王は、その一言の中にある多くの意味をすべて受け取った上で答える。
「構わん。」
そう答える王の顔は、先ほど見せていた冷たいものとは全く違うものとなっていた。
普段通り、いやむしろそれ以上に朗らかな表情だ。
無理もない。
事情は分かっていても、信じていた二人に裏切られたばかり。
その上さらに、信頼する部下に裏切られたのだ。
せめて、その部下の思いだけでも聞くことができ、負の感情ではないと分かった王の喜びはいかほどか。
だが、こういう時だからこそ、余計に緒を締めて欲しいもの。
だが、そんな思いも杞憂だったようだ。
「大臣。
念の為、ジェドに尋問を行うように伝えよ。
今回は一応話す意思があるので拷問までは必要ないが……まぁ何か不審な動きがあれば行うことも許可する。
また、監視は強化しておけ。
ああいう問答の後こそ隙ができる。
ただし、やり過ぎて不信感を生まぬようなるべく気付かれないように強化せよ。」
喜びがあっても一切の妥協なし。
大臣は満足そうな顔で、
「ハッ!!」
と力強く返事をする。
これぞ自身が仕えるべき人。
大臣は、そんな偉大なる王に次の指示を仰ぐ。
「剣士団、魔導士団についてはいかがなさいますか?
副長達はベテランながら他の者を支えさせるのが良いと副長の役を与えましたが、こうなってはそのまま副長達に団長をさせる方がよろしいでしょうか?
また、式典についても、すでに諸外国へ話は伝わっております。
ここで中止となれば、流石に他国に次期団長達に何かあったことが察されてしまうのではないかと……。」
「ふむ…………。」
王は顎に手を当て、しばらく思案する。
そして、
「団長についてだが……先日引退させた前剣士団長、魔導士団長を呼び戻せ。
やつら、引退したはいいが、暇で暴れ回っていると聞いているぞ?
どうにかして発奮させてやらねばと思っていたが、まぁ丁度いいだろう。
そして、式典だが……丁度やつらは今年で就任後20年だったろう。
それを祝ってのものとしておけ。
勘繰る他国の者も出るだろうが……まぁ確信には至るまい。
少しでも時間を稼ぎつつ、解決に向かわせる。
よいな?」
かなり苦しい話ではある。
これまでの動きから、この国の剣士長、魔導士長を変更する予測は各国つけているだろう。
それが外れ、加えてアキ、ケイ両名の姿が見えないとなれば、何かあったのだろうという事は簡単に悟られてしまうだろう。
とはいえ、式典を中止すると言えば余計に他国に隙を晒してしまう事となる。
一番良いのは式典までにこの問題が解決できる事だが、ヴェイン達が失敗したのであればもう現実的な話ではない。
これ以上は、ないのだ。
「ハッ!!かしこまりました。」
大臣は勢い良く返事をすると、急いで部屋を出て事に当たる。
王はそんな大臣の後ろ姿を暗い表情で眺めつつ、
「すまんな。」
そう一言呟くと、王もまた次の業務へと取り掛かるのであった。




