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夢の旅  作者: 秋川 味鳥
旅の始まり
38/52

見習い剣士 その4

「ケイィィィィィィィ!!!!!」


 そう叫ぶと、ヴァンは手のひらサイズの炎を二発、ケイに向けて撃ち出す。

 それとほぼ同時、ケイはヴァンに向かって走り出す。

 炎の速度はかなり速い。

 ヴァンからすれば、対応されるとしても魔術で、という想定の攻撃だろう。

 が、それが通用するのはさっきまでのケイの話。

 彼にはもう、剣で魔術に対抗する術がある。


「ふぅっ…………!!!」


 ケイは目の前に迫る炎を、一息で斬り払う。

 炎は先ほどと同じく、元に戻る事なく霧散。

 完璧だ。

 ケイは完全に剣で魔術を斬る術を身につけた。

 ケイはそのまま加速しながらヴァンへと真っ直ぐ向かっていく。


「くっ……………!!!」


 想定外の対応に、ほんの一瞬動きが止まるヴァン。

 だが、当然ヴァンも歴戦の戦士。

 すぐにケイの状況を見抜いて、一番嫌な方法を取ってくる。


「……これに対応してみせろ!!!」


 ヴァンは手のひらの炎を指の先へと移動。

 そのままケイに指先を向けて炎を発射。

 蛍の光ほどのサイズの火がとてつもない速さと数でケイに向かって一直線に飛んでくる。


(ーー来た……!)


 ケイの想定していた難関。

 数と速度の掛け合わせ。

 今のケイに、剣でこれに対応する技術はない。

 だが、ここで魔術に頼るのはプライドが許さない。

 では、どうするか。


(まずは……耐える……!!!)


 パンッ!!!


 という破裂音と共に、火の玉がケイの肩に着弾。

 だが、ケイは構わず突き進む。


(速度と量はあっても重さはない!数発くらったところで致命傷にはならない!!)


 サイズが小さい分、走っている限りは服に燃え移るようなことも無さそうだ。

 とはいえ、


(僕は今、魔術でかろうじて身体を動かせている状態。

 どんなに小さなダメージだとしても、ヴァンの元に辿り着く前に動けなくなるだろう。)


 ケイの予測としては、ヴァンまでの距離の半分。

 この強行策で何とかなるのはそこまでだ。


(そう、問題はこの後。

 正直僕にも予測はつかないが……。

 何とかするしかない……!)


 そうこうしているうちに、問題の距離まで後もう少しに迫ってきた。

 それと同時に、そろそろ攻め手を変えられるくらいの間ができてきている。

 このまま押し切れば勝てる事は、ヴァンも承知だろうが、彼の中のケイはこれであっさりやられるような男ではないだろう。

 だからこそ、より早く決着をつけるために攻め手を変えてくる。

 その一瞬を、狙う。


(ーー今だ!!!)


 手を変えようとする一瞬、ほんの僅かだけ弾幕に揺らぎが生まれる。

 その瞬間、ケイは剣を支えにして逆立ち。

 上から弾幕を抜け出す事に成功。

 そのまま横っ飛びして、今度こそ完全に弾幕の範囲外へ。

 一気にヴァンとの距離を詰める。


(だがまだだ…………!!!)


 この距離であれば、ヴァンの魔力操作速度ならなんでもできる。

 一方のケイは、もはや一撃すら当たる事が許されない。

 追い込まれたのは、ケイだ。


「くっ……………!!!!」


 ヴァンは少し焦りを見せながらも、身体を捻って次弾の準備。

 次弾として選んだのは氷弾。

 実に賢明な判断だ。

 今撃っている炎弾を無理に方向転換しようとしても焦りがある以上、ミスが生まれやすい。

 ならば新たな弾を作る必要が出てくるが、その条件でも氷弾は優秀な選択だ。

 空気中の水分を操作するためすぐに準備しやすい。

 同じ条件なら、空気そのものを撃ち出す手もあるが、空気は弾いても目で見えないためにどこに撃ったかの判断がつきにくいデメリットがある。

 まさに理想の選択。

 そんな弾丸が今、発射される。

 もう、これで終わり。


 ヴァンがそう確信しかけた、その時だった。


 チリチリ…………ボウッッ!!!!


 突如、炎が上がる。

 発火元は、


「ぅ熱っちぃあぁぁぁぁぁあああ!!!!!」


 ケイの肩。

 ケイの作戦?

 否、ケイの慌てようからして違う。

 おそらく、先ほどケイに当てていた火の粉の一つが、遅れて発火したのだろう。

 流石に予想外の展開に困惑するヴァン。

 だが、今まさに発射しようとしていた魔弾の勢いは止まらない。

 半分無意識ながら、そのままケイに向かって魔弾を発射する。


 それとほぼ同時、ケイはあまりの熱さに耐えきれず、発火した服を思い切り前に投げつける。

 互いに全く意識していない、偶然のタイミングの一致。

 氷でできた魔弾は、発火した服に着弾。

 いくら魔力で補強されていても、氷でできた弾が炎の中に放り込まれればひとたまりもない。

 氷弾はそのまま焼かれて消滅する。


 それが確認できるか、できないか、その一瞬。


 パッ!!!


 と炎が切り裂かれる。


 ケイだ。


 これだけのイレギュラーに見舞われながら、一瞬の怯みもなく、ただ全力で突き進む。


 方やヴァン。


 こちらは今目の前で巻き起こった事象に全く対応できていない。

 だが、むしろこれが正常だ。

 目の前で急にあれだけの出来事が巻き起これば、どんなに経験のある魔導士でも全く怯まずに対応するのはほぼ不可能だ。


 結局は、経験。

 それがこの二人の勝敗を分けることとなった。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


 叫びと共に一閃。

 剣で腹部を薙ぎ払う。


「流石に命を奪いはしない。

 剣で殴っただけだ。

 悪いが、後はよろしく頼む。」


 倒れゆくヴァンにケイはそう呟く。

 その言葉が届いているのか、それを確認する間もなく、ヴァンはドサッ!とその場に倒れ込み、動かなくなった。


「ふぅ…………。」


 一息ついて、剣に体重を預ける。

 勝ったのはいいが、何ともキツイ一戦だった。


「そもそも、こんな運勝ちで勝ったなんて言えたもんじゃないね。」


 そう自嘲気味に笑うケイ。

 とはいえ、この場を乗り切ったのは事実。

 これで心置きなく旅を続けられる。


 ケイはまだ魔術を解除していない。

 今解除すれば、この場で糸が切れたように倒れ込んでしまうだろう。

 せめてアキの元へ辿り着いてから解除しなければ。

 だが、流石に体力の限界が近い。

 少しだけ休んで、早いところアキの元へ行こうーー


「ああぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあ!!!!!」


 突如、背後から響く言葉にならない叫び声。

 その声の主は、サロメ。

 爆発に巻き込まれたせいか、服はボロボロでほとんど裸同然とすら言える。

 目は血走り、怒り狂う獣のよう。

 その手には炎。

 すでに飛びかかった後であり、今まさにその一撃が当たろうかというところ。

 この状況を覆すことは、不可能。


「予想していなければ、ね。」


 その言葉と同時、ケイは剣を重りに一回転。


 バンッ!!!!


 と、剣の重みと遠心力で、そのままサロメを地面に叩きつける。

 サロメは、


「ガハッ…………!!!」


 という呻き声を残し、そのまま倒れ込んで動かなくなった。


「悪いね、サロメ。

 こういう戦闘の時は起こりうる最悪の展開を全て考えるんだ。

 起こる可能性が限りなく低いものであっても、ね。」


 ケイはかろうじて燃えずに残っていたマントをサロメにかけると、ボロボロの身体を引きずるようにその場を去っていった。

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