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禁書その2 はじめに
はじめに
著者がこの本を執筆するに至った経緯について、軽く触れておこうと思う。
私は約四十年、魔導士長としてこの身を捧げてきた。
その中で一つだけ、私は重大な規律違反を犯した。
幼き日から親しくしていた、司書を務める男に魔術を教えていたというものだ。
変わった男で、司書としての知識、仕事ぶりは正しく適正職であったにもかかわらず、魔導士になるという夢が捨てられなかった。
才能のない人間に指導するなど初めての経験で苦労したが、少なくとも私の目には、アイツは満足しているようだった。
そんなアイツが常々私に願っていたことが初心者用の魔術教本の執筆だった。
教えているだけでも十分罪であるのに、その上本を生み出せと言われて聞いてやるほど私はお人好しではない。
ずっと断り続けていた。
だが、そんなアイツも、もういない。
私を庇っていなくなったアイツに、最後にしてやれることがこれだ。
とはいえ、この本は流石に禁書指定をせざるを得ないだろう。
アイツの願うように、誰かの目に触れる日は、永遠に来ないかもしれない。
それでももしこの本を読み、ここまでの文章を読んでくれたものがいるのであれば、この本を有効に活用してくれることを願う。
Ⅰ
この世界における魔力について




