プロローグ
草木が風に揺れる草原の真ん中で、二人の少年が向かい合って座っている。
少年たちは一冊の本を前にして、目を輝かせながら話をしている。
「なあケイ、お前は何がいい?」
少年がキラキラした笑顔で、「ケイ」と呼ぶ目の前の少年に問いかける。
その問いに対し、ケイは控えめに、それでいて迷いなく開いているページの一点を指さす。
「やっぱり剣士かぁ!お前、ずっと剣士長様に憧れてたもんな!」
ケイは頬を赤らめつつも、嬉しそうな笑顔でこくりと頷く。
「……アキは?アキは何がいいの?」
今度はケイが、少年に問う。
アキ、と呼ばれた少年はニヤリと笑うと堂々と宣言する。
「そりゃあもちろん魔導士!魔導士長様のお話もめちゃめちゃカッコイイし、俺もあんな風に色んな魔術で闘うんだ!」
ケイは、そんなアキの姿を羨望のまなざしで見つめながら、
「うん、アキならできるよ、絶対。そんな気がする。」
ケイのそんな言葉に、アキも照れくさそうに笑うと、
「へへへ……。そうかな?……っそうだ!」
と大きな声を上げる。
アキは勢いそのままにケイの肩を掴むと、
「二人でさ、一番上を目指そうぜ!俺は魔導士長に、ケイは剣士長になって、この国に名を轟かせてやろう!今の剣士長様と魔導士長様みたいにさ!」
それを聞いてケイは大きく目を見開いて輝かせるが、すぐに目を伏せた。
「―っ!……いや、僕には無理だよ……。アキみたいに強くなれないし、自信もないよ……。」
「絶対なれる!俺も一緒だよ、ケイなら絶対強くなれる気がするんだ!だから、二人で最強になろうぜ!」
アキの勢いは留まることを知らない。
ケイは少しの間、うぅ……と唸りながら抵抗していたが、アキがこの状態になったらもう止まらない。
「……わかった。僕も頑張るよ。」
そう言って、ケイも笑顔を向ける。
「よし、約束だ!」
「うん、約束。」
二人は、小指を絡めて握手する。
そうして、まだ見ぬ未来へ思いを馳せる。
希望に満ちた未来へ……。