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閑話 エルフの過去 その7 ~受け継がれる意思~

 船での生活を始めてどのくらい経っただろうか?

 しばらくすると、キセノンの過去の話を聞くようになった。

 話を聞くと、キセノンも外国からやってきて、修行の旅をしていると言っていた。

 体力は勿論、知力や情報力も鍛えていると言っていた。

 この船に乗っているのも、修行の旅の一環だという。


「私……個人的な……事情で……旅に……出てる……」

「個人的な事情?」

「うん……お父さん……亡くなった……それで……遺言で……『強くなれ』……って……」

「……どうしたの?」


 キセノンは……涙を浮かべていた。

 ……彼女にも、悲しい過去があったようだ。

 私だけが悲しくて、辛いだけじゃない……そんなことを考えた。


「ごめん……お父さん……思い出したら……涙が……」

「……ごめんなさい」

「貴方が……謝る……必要は……無いよ? それに……楽しい事も……ある」

「……楽しい事?」


 キセノンは、涙を拭き、笑顔を見せた。


「うん……武術の……大会で……勝ったり……ダンジョンで……修行したり……誰かを……守ったり……」

「……」


 私は咄嗟に、リンが言ったことを思い出した。


『確かにオブオブの言う通り、バリ悲しい事だってある……だからこそ、数少ない楽しいことを守りたいんだ!』


 私は決めた、もしも新しい土地に着いたら……キセノンみたいに、楽しい事を見つけられるようになりたい。

 そう思って私は……キセノンの手を掴んだ。


「……楽しい事……『アタシ』も見つけたいな! 『ノンノン』! アタシにバリ楽しい事、教えて!」

「……ノン……ノン?」

「うん! キセノンだからノンノン! ……と、そういえば、アタシの名前、まだ言ってなかったよね!」


 ……アタシは、改めて、名前を名乗った。


「アタシ、『リン』! 改めてよろしくね! ノンノン!」


 アタシは、「彼女」の意思を受け継いで、楽しい事を守る……そう考えて、名前を名乗った。

 名前を名乗ると……ノンノンは笑顔で手を掴み返した。


「うん……よろしくね……『リンちゃん』……」


 ……そういえば、「彼女」は、挨拶の時にこんなことをしたっけ?

 アタシはノンノンの顔に、自分の顔を近づけて……お互いの唇を繋げた。


「ん……んん……」


 ノンノンは驚愕の顔を浮かべていた……アタシは不思議と、嫌な気分ではなかった。

 しばらくして、アタシたちは離れた。


「と……突然……何?」

「挨拶だよ! 挨拶!」

「挨拶……で……キス? 恥ずかしい……」


 ノンノンは顔を真っ赤にしていた。

 アタシもちょっと恥ずかしくなったけど……「彼女」はそうじゃないと考え、平然を装った。


「恥ずかしいの?」


 私が笑顔で聞くと、ノンノンは首を思いっきり振った。


「うん……でも……悪くない……」

「……そっか! それじゃ! 改めてよろしく!」

「うん……よろしく……」


 これが、ノンノンとの……初めての出会いだった。



「……本当にここで良いのか?」

「うん! ここでいいよ!」

「そうか……まぁ、お前が決めたことなら、止める理由は無いな……元気で暮らせよ!」

「うん! 船長もありがとう!」


 アタシ「たち」は新天地で、この船とお別れとなった。

 この船には本当にお世話になったな……。

 ちなみに、「たち」というのは……。


「キセノン、お前まで離れてしまうとはね……通訳を改めて探さないと……」

「私よりも……優れた……人は……いるよ……」

「そうだといいんだがねぇ」


 アタシはノンノンと一緒に新天地……「サンルート王国」で、新たな旅に出ることにした。

 アタシが「ここで降りる」って言うと、ノンノンも「私もここで降りる」とか言ってきたので、少し驚いてしまった。

 船に別れを告げ、アタシたちは歩き始めた。

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