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閑話 エルフの過去 その6 ~船での生活と故郷の今~

『おーい! 到着したぞ! 荷物を運んでくれ!!』


 寝ていたのだが、船員が大声で何かを言ってきたので、私は起きてしまった。


「どうしたの?」

「港……着いた……荷物……降ろせって……」

「……そっか」


 私たちは早速着替え、荷物を下ろすのを手伝った。

 港を降りると、ファンスウィンとは違う風景が広がっていた。


「……ここは?」

「……キーキュル王国……ファンスウィンの……南」

「なるほど」

「とにかく……荷物……降ろそう……」


 私はキセノンの後ろについていき、荷物を下ろしていった。

 ……って。


「……ええ!?」

「……どうしたの?」

「いやいやいや、よくそんな重い物持てるね!?」


 キセノンは、馬車一台分はある荷物を片手1つで持ち上げていた。


「別に……鍛えて……いるから……」

「あ、そう……」


 そういえば部屋の中でも、トレーニングしてたっけ……。

 だからと言って、そんな量持てる普通!?


『おらぁ! 早く降ろせ!! 時間がねぇぞ!!』


 棒立ちしている私に向かって、船員が何かを叫んだ。


「……なんて?」

「早く……降ろせって……」

「あ、うん……」


 私は足早に荷物を下ろした。



 ……しばらくして、私はキセノンに『サンルート語』を教わるようになった。

 言語が分かるようになると、船員たちが何を言っているのかわかるようになったし、どこからか仕入れたであろう噂も理解できるようになった。


 ……ある日の事。

 あれは南の国だったかな……キセノンが、現地の商人となにやら噂話をしていた。

 しかも、私の事をチラチラ見ながら。

 気になった私は、キセノンに聞いてみた。


「……何の話してたの?」

「うん……貴方の……故郷……ファンスウィンの……話……」

「……」


 故郷の話か……どうせくだらない事だろう。


「ファンスウィン……共和制に……変わった……らしい」

「共和制?」

「うん……みんなの……投票で……首長が……選ばれる……氏族争い……終わる……」


 ……それはいいニュースだ……だが、キセノンの表情は悲しげだった。


「本当に終わるの?」

「いや……それが……」

「……それが?」


 キセノンは、あまり言いたくないようだった。

 ……私はどこか察してしまった。


「選挙で……選ばれた人……賄賂……受け取ったとか……氏族の人数的に……有利になったとかで……また……」

「……」


 キセノンが言った言葉に、私は悲しい気持ちになった。


「ごめん……嫌な気分に……させちゃった」

「いいよ……別に、あんな奴らの事なんか」

「……」


 キセノンは、悲しい表情で、私を見つめた。


「おい! 出航するぞ! 早く乗れ!」


 船長が私たちに向かって叫んだ。

 ……そろそろ出航か。


「……行こう、乗り遅れちゃう」

「うん……」


 私たちは船に乗り込んだ。

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