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閑話 エルフの過去 その5 ~吸血鬼との出会い~

 もう……何もかもが嫌になった。

 エルフなんて……もう沢山だ。

 くだらない過去に捕らわれて、くだらない事で争って、殺して……。

 ……私は決めた、もうこんなところ出て行ってやる。


 ……真夜中、私は髪型を変え、こっそり家を飛び出し、港へ急行した。

 まずは己の足で、様々な土地を歩いて行った。

 そして、3つほど都市を抜けたところで、荷馬車にこっそり乗り、荷物に隠れて移動した。

 ……潮の香りがしたところで、こっそりと降り、私は「外国の船」を探すことにした。

 そして、目に着いた外国船に、これまたこっそりと乗り込む。

 ……申し訳ないと思ったが、荷馬車から食べ物をいくつか持ってきていたので、これで次の港までは耐えれば大丈夫……そう考えていた時だった。


『……誰だ、貴様!!』


 出航して数時間、船員と思われる兎獣人に見つかってしまい、私は船長の元へと連れていかれてしまった。

 外国語で何を言っているのか分からなかったが、怒っているのは分かった。

 船長の目の前で跪き、両手を拘束される。

 船長は……その身長の小ささから、ドワーフの女性と見られた。

 傍目で見れば、8歳くらいの人間の女の子にしか見えないだろう。


『誰だ? まさかこの船の荷物を奪いに来たのか? おお?』


 女性は荒っぽい口調で、私に尋問する。

 「通訳の吸血鬼」がそれを翻訳し、私に伝えてきた。

 私はそれを聞き、咄嗟に首を横に振った。


「ち、違います! わ、私は……その……」


 理由は言い辛かった。

 家出をして、外国に逃げたい、そんなんで船に侵入するなんて……。

 すると……通訳の吸血鬼が、小さい声でこんなことを言ってきた。


「貴方……エルフ? ……氏族……争いから……亡命?」


 氏族争いから亡命……間違いではなかった。

 私は大きく頷き、そうであることを必死に伝えた。

 通訳の吸血鬼は、それを船長のドワーフに伝えると……船長は、納得した表情で頷き、何かを吸血鬼に伝え、去っていった。

 船長が去っていくのを確認すると、他の船員も散り散りになっていった。


「あ、あの……一体何が?」


 私が吸血鬼に不安そうにそんなことを言うと……吸血鬼は、笑顔でこう答えた。


「亡命……なら……乗せて……あげる……でも……船の……仕事……手伝えって……」

「……それって」

「うん……よかったね……」


 私は心の中で、ガッツポーズをした。


「私……名前……『キセノン』……貴方は?」


 吸血鬼は……キセノンと名乗った。

 私は……名前を名乗るのに躊躇した。

 何故あんな奴らから貰った名前を名乗らなきゃいけないのか……私はどうしても、名乗りたくなかった。


「もしかして……名前……ない?」

「あ、あるよ! あるけど……」

「……」


 吸血鬼……キセノンは、不思議そうな顔で、私を見ている。

 ……まぁ、そんな風にもなるよね。


「まぁ……名乗りたく……ないなら……大丈夫……早速……ついて……きて」

「う、うん!」

「じゃ……こっち……部屋……案内……する」


 私はキセノンの手を掴み、部屋へと案内された。

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