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閑話 エルフの過去 その4 ~突然の別れ~

 そこから、自由な時間は訓練の時間に変わった。

 リンと一緒にダンジョンに潜って、ボウガンの練習を始めた。

 正体がバレないよう、リンに「髪の毛の色を変えられる魔法」を教わった。

 リンの髪の毛もその魔法で赤毛にしたらしい。

 私は……違う誰かになりたいと考えて、外に出るときはピンク色の髪にすることにした。

 一方で、ボウガンの方はというと……。


「オブオブ! しっかり狙って!」

「ね、狙ってるよ!!」


 ……最初は上手く行かなかった。

 しっかり狙っていると思っていたのに、矢が明後日の方向に行ったり、命中したかと思ったら急所を外してピンチになったり。

 ダンジョンを抜けると、必ず反省会を開いた。


「……いい? オブオブ、ボウガンは片手じゃなくて、両手で狙いを定めるの、それで……」

「……小さい敵を狙う時どうすればいい?」

「あぁ、そういう時は……」


 リンが私の師匠になってくれて、ボウガンについて1から10まで教えてくれた。

 ……厳しい一面もあったけど、それでも、楽しい事を守りたい一心で頑張った。


「やったね! オブオブ!」

「うん!」


 私たちは2人で1人、息ぴったりのコンビだった。

 楽しい事を守りたいという想いでやっていけた……それなのに、悲しい事はやはり起きてしまった。



 ……その日は突然現れた。

 いつものように庭で待っていたのだが、リンの姿が一向に見えない。

 おかしい……まさか、武力衝突に巻き込まれたのでは?

 私はそんな不安を考えつつも待ち続けた……。

 ……最終的に、彼女は現れなかった。


 胸騒ぎが止まらなかった、もしも彼女の身に何かあったら……そう考えた。

 そして、それは的中してしまった。


 ある日、お母様は街の中心部に民衆を集めた……「臨時で演説を行う」とかなんとか言って。

 無論私もそれに着いていった……そして、そこで見たのは。


「……嘘……でしょ?」


 ……身包みをはがされ、拷問を受けたのか傷だらけのリン……そして、彼女に似た女性と男性だった。

 3人は縄で縛られ、既に虫の息だった。

 民衆は3人を囲うように集まり、お母様は3人の前に立って「演説」を始めた。


「皆の衆! ここにいる者たちは誰だかわかるかな? ……そう、憎きカストル氏族と友好関係にある氏族……『アルヘナ氏族』の族長とその娘だ!」


 お母様が、杖で女性......恐らくリンの母親をつつきながらそんなことを叫んだ。

 ……アルヘナ氏族……リンが、その氏族の……族長の娘?

 私はその言葉を聞いて……驚愕した。

 だが、そんな表情をしてしまったら、民衆やお母様に違和感を持たれてしまう……私は自己暗示をかけ、無表情を貫いた。

 ……でも、体の震えは止まらなかった。


「つい数日前、この娘が我がラサル氏族の領内に侵入し、スパイ活動を行っていたのだ! これは許し難い行為である……よって、只今より、この3人を火炙りの刑に処する!!」


 ……私はお母様の演説を黙って聞くしかなった。

 泣きたかった、叫びたかった、やめてと言いたかった。

 ……でも、そんなことはできない……それをしてしまったら……。


「アルヘナ氏族に死を!」

「クソアマが!!」

「ラサル氏族万歳!!」


 民衆は3人に向かって石を投げ、3人の体をさらに傷つけた。

 そうしている間に火が灯され……3人は……原型を留めなくなった。

 私は悲しみを抑えるために……自分の唇を傷つけた。

 そして、心の中で、リンに謝り続けた。


ごめんね、リン。

ごめんね、リン。

ごめんね、リン。

ごめんね、リン。

ごめんね、リン。

ごめんね、リン。

ごめんね……。


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