閑話 エルフの過去 その3 ~悲しい事だけじゃない~
「ちょ、ちょっと! どこ行くの!」
「いいから、もうすぐ!」
森を駆け抜け、私は誘導されている。
しばらくすると、森の奥に光が差し込んでいるのが見えた。
リンはそれに怖気つくことなく、進み続けた。
……森の中を抜け、光の奥に行くのは、そう時間は掛からなかった。
私は眩しさから目を守るため……瞼を閉じた。
……瞼を閉じたときは真っ暗だったが、一瞬にして、それが真っ赤になった。
「……さ、着いたよ! ……って、目開けなよ」
リンは、私の肩を揺さぶり、目を開けるよう促す。
私は恐怖を感じつつゆっくりと目を開けると……そこには。
「……綺麗」
「でしょ?」
……まるで虹のように色鮮やかな花畑が広がっていた。
私はその風景に圧巻した。
私が想像する「外」というのは、悲鳴が絶えず、死体が転がり、暗い物だった。
しかし、ここは違った。
悲鳴ではなく、小鳥のさえずりが響き渡り、芸術作品のような花々が咲き誇り、太陽がそれらを輝かせていた。
「……ね? 楽しいことだってあるでしょ?」
「うん……」
確かに、悲しい事ばかりではなかった。
私も知らなかった、楽しい事、美しい事、そういうのもあるのだと理解した。
「アタシね、将来的にこの花畑みたいな、バリ楽しい事を守っていきたいと思うんだ」
「楽しい事を……守る?」
「うん! 確かにオブオブの言う通り、バリ悲しい事だってある……だからこそ、数少ない楽しいことを守りたいんだ!」
「……でも、そんなの、貴方だけが背負う必要はないんじゃない?」
「アタシだけが背負う必要は無いか……でも、他の誰かがその責任を負うくらいなら、アタシがやりたいな!」
「……」
私はその言葉を聞いて……考えた。
私はリンと出会うまでは、楽しい事なんて経験したことも無かった。
いつも、氏族の長としての教育ばかり……悲鳴や死体の山を見たり聞いたりするばかりで、そういうのに縁が無かった。
でも、リンのおかげで、そんな楽しい事を知ることができた。
……私も、楽しい事を守りたい。
「ねぇ、リン」
「何?」
「私も……守りたいな、楽しい事」
「……オブオブ」
「だから……私に……守り方を教えて!」
「……うん! 一緒に守ろう!」
私はリンと握手をし……一緒に守る決意を固めた。
「これからよろしくね!」
「うん、よろし……んん!?」
これからよろしく、そう言おうとした矢先、リンが私の唇を抑えつけた……「自分の唇で」
こ、これは……き、キス!? な、なんで突然!?
し、しかもこれ……私の……ファースト……。
「えへへ! よろしくね! オブオブ!」
「ちょ、ちょっと……なんで突然キスなんか……」
「え? 別に普通でしょ?」
「……」
彼女の氏族では普通なのか? 全く……。
「じゃ、早速向こうまで競争だ!」
「え、ちょっと待ってよ!」
私はキスの恥ずかしさを隠しつつ、リンを追いかけた。




