第74話 「前に進むことはできる」
気が付くと、私たちは元の場所に戻っていた。
……あのチャラい集団も、道端に座り込んでいた。
「あの人たちも無事みたいですね! ……ですが、お友達が見当たらないようですけど……」
「……」
……そういえば、消えた人を探すって言ってたな。
「……ルリルリ、もしかしてだけど」
「リン……心当たりある?」
「うん……多分……」
「……」
私はリンから話を聞いた。
……白骨化した遺体があったという事を。
間違いない……それは……。
チャラい集団も、仲間が消えたのがショックなのか、立ち上がれないようだった。
「……まさか、あの人たちのお友達は……」
アリスさんも察したのか、口を押え、言葉を失ってしまった。
……無理もない、私も正直やるせない。
すると、アリスさんは、チャラい集団に向かって走り出し……大きく頭を下げた。
「も、申し訳ございません! 私の力不足で……皆さんのお友達を……」
「あ、いや……その……別にアンタが悪いわけじゃ……」
「いえ! 私がもっと早くあなた方の下に来ていれば……」
「……いいって!」
チャラい集団は、必死に謝るアリスさんに困惑していた。
すると、集団の一人が立ち上がって、同様に頭を下げた。
「謝るのは俺らの方だ……俺らは無意識にアンタを馬鹿にしていた、もっとよく考えて行動していれば……」
「……はい?」
アリスさんは、頭を下げる男に困惑していた。
「そ、そうだよ! 私たち、貴方に対して酷いことを……すみませんでした!」
「す、すみませんでした!! そ、それと、守ってくれてありがとうございました!!」
残る連中も、アリスさんに対して謝罪の念を露わにした。
アリスさんはそれを見て……涙を流しているのか腕で目をこすっていた。
「そんな……皆さんに謝られるようなこと……何も……ないですよぉ……」
……そんな姿を見て、いても経ってもいられなくなったのか、キセノンがアリスさんに向かって走り出した。
私たちも思わず走り出してしまった。
キセノンはアリスさんの肩をやさしく叩き、アリスさんに向かって言葉を発した。
「……アリスちゃん……聞いて……」
小さいながらも、その声には真剣さが伝わった。
「……確かに……失った命は……戻らない……でも……前に……進むこと……できる」
「キセノン、それって……」
ゴーダスターズの名言だ……。
「……そうだね! リスリス、あの人たちのお友達は確かに救えなかった……でも、前に進んで、頑張れば、救える命も増えるかもしれない……そうじゃない?」
「……そう、ですかね?」
「うん! だってダンジョンを出る前に決めたんでしょ? 『探索者の仲間を集めて、冒険に出かけよう』って、それを続けていれば、もしかしたら、いい結果が出るかもしれないじゃん!」
リンは落ち込んでいるアリスさんに向かって言葉を送る。
……確かに、過去にやってしまったことはもう取り戻せないかもしれない、でも、私たちは前に進むことはできる。
前に進んでいれば、失敗や挫折もあるかもしれないけど、その先にいい結果が待っているかもしれない。
私だって、諦めずに異世界の研究をしていたら……みんなに出会えたんだから!




