第58話 ニュースを観る異世界人 3
『なので、ここでは彼らをサンルート人と呼びましょう。サンルート人は全国各地に現れ、ほとんどの者が、道路で寝ていたり、公園を占拠したりしているようです、警察は彼らの対応に追われている模様です』
『不安ですねぇ、もしかしたら、暴徒化して、私たちの生活も危なくなるかもしれません』
『ここで、例を挙げてみましょう、こちらはトルコのアフガニスタン人による難民キャンプです、ここには2万人に近い難民が住んでいます、彼らの中には強盗や暴行事件を引き起こすものが多く、暴徒化したトルコ人がアフガニスタン人を襲う、なんてことも起きているみたいですねぇ』
ラピスとキセノンはキャスターの話を聞き……身が震えていた。
「暴徒化……有り得そうな話やな
「うん……怖い……確かに……ありそう……」
「……どうした? 2人とも」
ゴルドはそんな2人を心配して、声を掛ける。
「……つまり、今この国におるサンルート人が略奪や強盗……その他もろもろの犯罪をやる可能性があると言っているらしいで」
「……どういうことだ?」
「ウチらはラッキーな方や、瑠璃はんや琥珀はんに一時的に泊まらせてもろてる……せやけど、ほとんどのサンルート人は、ここ日本で路頭に迷っているはずや」
「ということは……そいつらが生活に困って犯罪に走ると……そういうことか?」
「せや、ある得ない話やないやろ?」
「……そうかぁ? サンルート人がそこまで馬鹿だとは思えんが……」
「それにや、この国の人がそんなサンルート人に激怒して襲うかもしれへんと言っているんや」
「うーん……でも、琥珀さん優しいぜ? 瑠璃も悪い奴じゃなさそうだし……」
ゴルドはラピスが展開した推論を半信半疑で聞いていた。
「ゴルドちゃん……人は……極限な状態になると……変わるよ……色んなとこ見てきたから……わかる……琥珀ちゃんと……瑠璃ちゃんが……良い人なのは……分かる」
「極限な状態ねぇ、ワシはそうは思わんなぁ、女王様がいらっしゃるんだぞ? サンルート人なら、陛下が悲しむような行為は行わないと思うが……ま、全員が全員そうじゃないのは分かるけどよ」
ゴルドは女王陛下の威厳を強く信頼していた。
……そんな中、キセノンはある心配をする。
「そういえば……女王陛下……ご無事……かな?」
「さぁな、ワシらと同じくここに転移してきたのなら……無事だと思いたいがな」
「どこかで……保護……されてる……といいな」
ゴルドとキセノンが女王について不安に思っている中、テレビの中では『未知の建物』についての話題に変わった。
『未知の生命体とともにやってきた、未知の建物ですが、こちらについても、世界各地で複数出現している模様です』
『なんなんでしょう、これは……鉄塔並みに大きいですねぇ』
『はい、こちらなんですけれども、一見するとただの不気味な建物。という印象が強いのですが、もっと恐ろしいのが、中からこれまた未確認生命体が出現したとのことです』
キャスターが画面を切り替え、一般人が撮影したであろうモンスターの写真、そしてそれと戦う「サンルート人」の姿があった。
「未知の建物に未確認生命体……ダンジョンとモンスターのことやな」
「ラピラピ、次はダンジョンの話?」
「せや、日本……というかこの世界では、異様な存在らしいで」
リンは納得したのか、「なるほど」と言わんばかりに手を叩いた。




