数年後 2
「教授、失礼します」
教え子が入ってきて、私はテレビを消した。
「どうしたの?」
「あの……少しわからないことがあって……」
そう……私は大学院を卒業した後、そのまま教授として、再び研究室へと戻ってきている
論文が評価されるようになり、「異世界研究の第一人者」として、研究をしながら教鞭を振るうようになった。
私は今まで培った成果をみんなの前で披露し……なんていうか、夢がかなったような気がした。
「ありがとうござます!」
「また分からないことがあったら聞いてね」
「はい! 失礼します!」
……教え子は、研究室を後にした。
さて……私も帰りますか。
☆
「さて、帰ったらどうしようかな」
私は考え事をしながら、道を歩いていた。
周りには、どこかと電話しながら急いで歩くスーツ姿の猫獣人、日本人と一緒に談笑するドワーフ、ランドセルを背負いながら手を繋いでスキップする日本人と元サンルート人の子どもたちがいた。
「ここ数年で、随分と変わったね……」
今までとは考えられない……今の姿があった。
理解し合えないとは最初に思っていたけど、段々と民衆も考え方が変わって来ていたようだった……でも。
『……理解はしあえる? 笑わせてくれる! 努力したところで、全員が理解するとでも?』
……私は、アルゴのあの言葉がまだ頭に残っていた。
確かに、表面上は理解しあえているとは言える、けど……
「その人! 万引きよ!! 捕まえて!!」
目の前のコンビニ……そこから、兎獣人の男が何かを抱えて飛び出してきた。
女性の店員さんが万引きと叫ぶ……ど、どうしよう?
「おらぁ!!」
すかさず、前を歩いていたインキュバスと犬獣人が、兎獣人を抑え込んだ。
私は、その様子に釘付けになってしまった。
「おい! 離せよ!!」
犯人の兎獣人は地面に叩きつけられ、抵抗していた。
「誰か! 警察呼んでくれや!! 万引きや万引き!!」
「この野郎! 大人しくしろ!」
……万引きで、一時辺りは騒然となるも、2人の元サンルート人のおかげで事態は瞬く間に収まった。
すぐさま警察が呼ばれ……犯人は連行されていった。
「ありがとうございます……助かりました」
「ええって、ええって……ワイらは当然のことをしたまでや、なぁ?」
「そうですよ、あと……すみません、商品ダメになっちゃいましたね……」
「いいですよ、そんなことは別に……」
店員さんは、2人にお礼を言いつつ、頭を下げた。
「……きっと、理解し合える……よね?」
私は一連の流れを見届けると……再び歩き出した。




