第301話 そんなの違う
「……違う……そんなの、バリ違うよ!!」
突然、リンの怒号が地下室に響き渡った。
「な、なんだぁ?」
クロムはリンの怒号に驚いたのか、呆気狩らんとした表情になった。
かくいう私も、驚きのあまりそんな表情になってしまった。
「ルリルリは……そんな風に簡単に人を傷つけることしないもん!!」
「……」
「ルリルリは……『私』に言ってくれた……『嫌になることは沢山あるけど、それでも自分や自分の同族を嫌いになるのは違う』って……だからルリルリは、自分のお母さんを殺めたいとか、そんな風に考えるわけない!!」
「……ど、どうかなぁ? さっきも言ったがオレは……」
「違うったら違うの!! お前はルリルリなんかじゃない!! ルリルリを知ったがぶりしてるだけだよ!!」
リンはクロムに億劫になることなく、私の壁になりながら、大声でクロムに立ち向かっていた。
……私は……クロムじゃない、リンはそう言ってくれている……。
そうだ、こいつは私の憎しみしか覚えていない、確かに私は母さんを憎んでいるのかもしれない、でも、それは私の全てじゃない。
私は……そのことをすっかり忘れていた。
「……クロム、貴方は私の憎しみを吸収したって言ったよね?」
「あぁ、だからオレはお前……」
「……それは違うね、人間は憎しみだけで生きているわけじゃない、楽しい事、悲しい事、憎たらしい事……色んなことを経験するものだよ、クロムはその中で憎しみしか覚えていない」
「……」
私の言葉に、クロムは黙り込んでしまった。
「……じゃあ、お前の事、もっと教えてくれよ」
「わかった、何を知りたいの?」
「……お前があの女に何かされたとき、何をやっていたのか」
「……わかった、ちょっと待って」
私は地下室のテレビを動かし、画面を檻の方に向けた。
ビデオを起動させ、私はキセノンが復元した古い特撮のビデオを入れた。
「……これはなんだ?」
「そうだねぇ……さっき言った、『楽しい事』かな?」
「……楽しい事か」
クロムは興味を持ち始めたのか檻に手を掛け、画面に注目し始めた。
私とリンは檻に背中を合わせ、画面に注目した。




