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第263話 陰謀論者

「……瑠璃!」


 ……大学院を出たその時、見覚えのある顔と聞き覚えのある声を聞き、私は驚きの余り、眠気も怠さも消え去った。

 私がそんな状態になってしまった理由……それは……幼少期から、その姿を目すると決まって怒られていたからだ。


「……母さん」


 目の前にいた人物、それは紛れもない、私を産んでくれた親……「猪飼亜子」だった。


「……一体何しに来たの?」


 私は動揺を抑えつつ、母に質問をした。

 謎の恐怖心により、手が震えてしまっているが……。


「一体も何も、貴方を迎えに来たんですよ」

「……迎え?」

「ええ、もう貴方もいい年齢です、そろそろ一家の一員として、『学校の運営』に携わりなさい」


 学校の運営……そんなことをしていたら、ここまでやってきた研究の成果が全てパァだ。

 答えは当然……。


「……嫌です、帰ってください」

「貴方も言うようになりましたねぇ……我々猪飼家は、由緒正しき学校『猪飼塾女子学園』を運営する一族だとお忘れで?」

「そんなの……姉さんに任せればいいでしょう?」

「確かにそうですね、ですが、一家が一丸となって運営をするというのが先代からの伝統です、だから貴方も大学時代に教員免許は取ったのでしょう?」


 ……私は母の言葉に腹が立ち……我を忘れた。


「……取ったんじゃない」

「……なんです?」

「あんたに言われて『取らされたんだ』!!」


 我を忘れて声を荒げた私に向かって、多くの目線を感じた。


「いい!? 今世界中で起きている事……わかるでしょう? 私の研究がようやっと認められそうなのに……学校の運営なんて、やってられるわけがない!!」


 ……私は自分の気持ちを率直に訴えた。

 すると、母は呆れるようにため息を上げた。


「貴方も、メディアに踊らされているようですねぇ」

「……何?」

「いいですか、これは政府が我々の木を逸らすために仕組んだものですよ、分かります? サンルート人なんて存在しません、そんなもの、ただの『動物』に過ぎません……あの塔も、政府が建設したただの建造物ですよ」

「……そんなもの?」


 私は、目の前にいる……意味の分からないことを口にしている女の胸ぐらを掴んだ。


「今……なんて言った?」

「なんですか?」

「政府が仕組んだ? サンルート人が……そんなもの? 塔が政府の建造物?」

「えぇ、『ネット上』では常識ですよ?」

「……はぁ?」


 この人……昔からイカれてる人だとは思ったけど、まさかこんな陰謀論にハマるなんて、どうかしてる。

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