第255話 親衛隊の端末
「あ……そういえば……みんなに……渡したいもの……ある」
「渡したいもの?」
「ノン姉ちゃん、アタシたちに何かくれるの?」
「うん……ちょっと……待ってて」
キセノンはそう言うと、地下室へと駆けこんだ。
……しばらくすると、重たい足音と共に、キセノンが戻ってきた。
キセノンが持ってきたのは……大きめのアタッシュケースだった。
「な、なんだいキセノンちゃん、これは?」
「ダンジョン探索……親衛隊の……アイテム……みんな……来たら……渡そうと……思ってた」
キセノンがアタッシュケースを開けると……そこには一昔前の携帯電話……所謂『ガラケー』が複数入っていた。
それも、一般的に普及していたガラケーとは違い、回転式のガラケー……所謂、『リボルバー式携帯電話』だった。
「ノン姉ちゃん……これ、なに?」
「これは……親衛隊の……連絡手段……みたいなもの」
「連絡手段?」
「まぁ……好きなの……一個……持って行って……」
翡翠、碧、銀次、そして慧の4人は各々ガラケーを手に取った。
「ねぇ、翡翠ちゃん、し、親衛隊って何?」
「ダンジョン探索親衛隊の事! 私たち、瑠璃姉ちゃんたちを全力で応援してるの!」
「ちなみにアタシの推しはノン姉ちゃん!」
「僕はゴルドおじちゃん!」
慧の質問に、各々メンバーが、自らの推しを語った。
「わ、私……これ……う、受け取っていいのかな?」
「いいよ……まだ……沢山……あるから」
4人は手に取ったガラケーをまじまじと見つめていた。
そんな中、銀次があることに気付いた。
「ねぇ、ノンお姉ちゃん、このマーク何?」
銀次は、携帯電話の裏に描かれていたマークを指差した。
そのマークは盾のような絵の中に『∞』のマークが描かれ、下に『ダンジョン探索親衛隊』と書かれていた。
「それ……親衛隊の……マーク……かっこいい?」
「これが? ……おお、なるほど、確かにかっこいい! みんなもおんなじ?」
「うん! 私のにもある!」
「アタシのにも!」
「わ、私にも……」
4人は各々ガラケーを見せ合った。
「あ……琥珀ちゃんも……親衛隊だから……受け取って」
「まぁ、ありがとうねぇ……いやぁ、懐かしいねぇガラケーなんて」
琥珀もガラケーを受け取り、懐に仕舞った。




