第250話 母
「あれ? ハクハク、お客さん?」
「なんだい、こんな朝早くから……ちょっと待っててくれよ」
琥珀は応対に向かうため、店の玄関口へと向かった。
「でさでさ、もっと飾りをバリ派手にした方が良いと思うんだけど!」
「いやいや、これ以上やったらガキどもの目に悪いだろうよ」
「えぇー、ねぇねぇラピラピも飾り派手にした方が思うよね!」
「うーん、ウチもゴルドはんと同意見やな」
「の、ノンノンは?」
「私は……リンちゃんに……賛成」
「ほーら! ね? もっと飾りを……」
4人は琥珀がいない間にも意見を出し合っていた。
……だが、それを中断せざるを得ない状況が出た。
「なんで来たんだい!! 帰ってくれ!!」
……突然玄関から、琥珀の怒号が飛び交った。
「な、なんや?」
「琥珀さんに何かあったのか!?」
「と、とりあえず行ってみようよ!」
「うん……琥珀ちゃん……心配」
4人は聞いたことのない琥珀の怒号に違和感を覚え、玄関口へと向かった。
「琥珀、そろそろ瑠璃を返してくれ」
「『姉さん』! 言っておくけどね、瑠璃ちゃんはもう大人なんだよ! あの子がどこへ行こうがあの子が決めるもんだ!!」
4人が目撃したのは……血相を変えて怒る琥珀と、スーツの姿で眼鏡を掛けた……「琥珀と瑠璃と似た女性」だった。
4人は物陰から2人を観察した。
「瑠璃ももういい年齢だ、そろそろ『世界の研究』なんていう馬鹿なことは辞めて、家のために働いてもらわないと……」
「馬鹿なのはアンタだよ! 外を見てみな! 今、瑠璃ちゃんの研究が世界的に認められようとしている! それを棒に振ろうってのかい!?」
「こんな現象……『政府が政治への関心を逸らすために行っている』に決まっているだろう? さぁ、瑠璃はどこだ?」
「……久々に顔を出したと思ったら意味不明なこと言うねぇ……いいから出て行きな!! そろそろ警察呼ぶよ!!」
琥珀は女性を追い出し、扉を閉めようとしたが……女性は扉をガッチリと掴み、無理やりこじ開けた。
「いや、帰らないね、瑠璃はどこだ?」
「良いから出ていってくれ!!!」
琥珀は女性を追い出すと、扉に鍵を掛け、居間へと戻ろうとした。
……4人は物陰から出て、琥珀と鉢合わせの状態になった。
「ま、まぁ……みんな……見てたのかい? すまないねぇ、大声出しちゃって」
「いや、それはバリ問題ないけど……」
「琥珀はん、さっきの女の人、誰や?」
「あぁ、あの人はね……」
ラピスの質問に、琥珀は静かに答えた。
「瑠璃ちゃんのお母さん……分からず屋で頭の固い……私の姉だよ」
☆
「はぁ……疲れた」
教授による発表の練習は、夜まで続いた。
ここまで練習する必要ある? 無意味だと思うんだけど……。
「夕食食べたら、論文を修正して……寝よ」
今日も大学院で宿泊だ。
次いかいやに戻ったら、営業再開してるかな……。
「……瑠璃!」
……大学院を出たその時、見覚えのある顔と聞き覚えのある声を聞き、私は驚きの余り、眠気も怠さも消え去った。
私がそんな状態になってしまった理由……それは……幼少期から、その姿を目すると決まって怒られていたからだ。
「……母さん」




