第245話 寝る前にニュース
私はDVDを取り出し、ケースに仕舞った。
そのままテレビを消そうとした、その時……キセノンがテレビを消そうとする私の手を抑えた。
「ねぇ……瑠璃ちゃん……寝る前に……ニュース観たい」
「ニュース？」
「うん……今……世の中……どうなっているのか……知ること……大事だから」
「いいけど……」
ニュースかぁ、あんまり観たくないな。
最近、私はニュースを観ていない、何故ならみんなに不利だったり、下手をするとほぼ中傷みたいな記事を目にするからだ。
まぁでもキセノンがどうしても観たいなら、しょうがないか。
私はチャンネルを替え、夜の情報バラエティに変えた。
『さて、本日も世間を騒がしている自称サンルート人についての事件です、一週間前、山梨県のブドウ園、静岡県のみかん農園が襲撃された事件で、山梨県警並びに静岡県警の合同捜査により、自称サンルート人１０名を窃盗などの罪で逮捕しました』
ほーら、やっぱりこういうニュースしかやってない。
映像の中には犬猫兎の獣人数名と白人数名が警察に連行されていく様子が映し出されていた。
「ねぇ、観るのやめない？ こんなニュース観たって皆が不快になるだけだよ……」
「いや、ルリルリ、ここはちゃんと現実を見なきゃダメだよ」
「せやで、これは起きてしまったことや、もう戻せへん……ウチらには観る責任があるんや」
「うん……つらいけど……現実……見る」
３人は真剣な表情でニュースを観ていた。
ニュースでは、お調子者の司会者とブームが落ち着いたお笑い芸人とお馬鹿キャラで売っていたモデルと自称専門家が、サンルート人や他の国に現れた異世界人について、あることない事を面白おかしく紹介していり、ダンジョンについて知りもしないくせに憶測であーだこーだ言っている様子が展開されていた。
私は、どうしても画面を直視できなかった……皆の事を思うと、とても辛かったからだ。
『……さて、続いてのニュースですが……同士討ちを起こしていた、主に北アメリカに現れた自称エルフ族についてです、アメリカおよびカナダ軍の合同軍事作戦により、複数の集団が事実上の降伏宣言を行いました、アメリカ軍は複数の戦闘を指揮したとして、指導者数名を逮捕した模様です』
映像が切り替わり、数名のエルフの男女の顔写真が映し出された。
エルフ族……内戦……リンの言葉を思い出し、私はさらにつらい気持ちになった。
すると、そんな私を察したのか……肩に何かの感触を感じた。
「大丈夫……アタシ、ちゃんと見る」
「リン……」
リンは、優しい笑みを浮かべ、私の肩を撫でていた。
