第238話 一旦お別れ
「そ、そうだよみどりちゃん! みどりちゃんこの間……『災難が起きるけど、どこかで救いの手が来る』って占ってくれたじゃん! あの後地震が起きて……それでるり姉が助けてくれたもん!」
「あ、アタシも! 『空手の試合は今のままでは負けるけど、誰かの助言を聞けば勝てる』って占ってくれたじゃん! 実際あの後ノン姉と出会って試合に勝てたもん!!」
翡翠ちゃんと碧ちゃんは、各々占いによって変わったことを言ってきた。
なるほど、そう聞くと、慧ちゃんはやっぱり占いのセンスがあるのかも。
「人と違うかぁ、ウチも悩んだことあるからわかるで、その気持ち……そりゃ辛いもんやろな……ウチも他と違う言われとったわ」
……そっか、ラピスも他の同族とは違って男性が苦手だから、それでからかわれてたんだっけ。
「人と違うって辛いよね」
「瑠璃はんもそうやったんか?」
「うん、やっぱり世界の研究なんて、他の人からは浮いちゃうよ……だから、慧ちゃんの気持ち、わかるかも」
「……辛いな、お互いに」
「そうだね……」
私とラピスは感極まって、リンと同じように、慧ちゃんを抱きしめた。
「慧ちゃん、リンの言う通り、慧ちゃんはおかしくない、寧ろすごいと思うよ、占いのおかげで翡翠ちゃんと碧ちゃんは救われたわけだし」
「そ、そうかな?」
「うん、確かに悪い結果も出るけど……それは運が悪かったってだけでしょ?」
「う、うーん……運が悪いか……」
「でもそれって、占いの面白いところって思わない?」
「そ、そう……かも」
翡翠ちゃんは、私たちの体温を感じつつ、どこか納得した表情を浮かべていた。
しばらくして、私たちは慧ちゃんから離れた。
「ねぇ、ミドミド! もっとあなたの占い、聞きたいな!」
「え? い、いいの?」
「うん! あ、そうだ! もうすぐいかいやが営業再開するんだ! だよね、ルリルリ!」
「うん、叔母さんの体調がよくなったら再開するよ」
営業を再開すると言った途端、翡翠ちゃんと碧ちゃんが歓喜の声を上げ、私に抱き着いてきた。
「ねぇねぇるり姉! 今の話本当!?」
「本当だよ」
「やったぁ!! アタシ、絶対行くから!!」
「ふふふ、待ってるよ、碧ちゃん」
私は2人を抱きしめ返し、頭を撫でた。
「じゃあさ! 慧ちゃんも一緒に行こう!」
「い、いいいいい、いいの?」
「もちろん! みんなで行ったほうが楽しいよ!!」
「そうだ! そういえば銀ちゃん、足の調子が良くなってきたって言ってた!! もしかしたら、いかいやに行けるかも!!」
「いいね! じゃあ4人で行こう!! 決まりだね!!」
どうやら子どもたちの間で、約束が決まったようだ。
「ほな、もうすぐ日が暮れるし、はようお家帰んなさいな」
「うん! じゃあるり姉、リン姉、ラピ姉! 今度いかいやで!!」
「またね!!」
「ま、また会いましょう……」
私たちは子どもたちに手を振って見送り、子どもたちは走って住宅地の中へと消えていった。
「営業再開、バリ楽しみだね、ルリルリ!」
「うん、早く皆に会いたいけど……私明日からしばらく大学院なんだよね」
「それは残念やなぁ……まぁでも、いかいやや琥珀はんの事はウチらに任せなさいな」
「うん、ありがとう」
営業再開の日……私は立ち会うことができるのだろうか?
「じゃあ、アタシたちも帰ろう!」
「せやな!」
「え、ちょっと……」
「さぁしゅっぱーつ!!」
リンとラピスが再び私の腕に巻き付き……私たちは帰路へと着いた。




