第211話 あの時の
「いや、本当に……その節はお世話になった! 本当にありがとう!!」
「いや、だからあなたと私は初対面では?」
店を出て、従業員専用の入り口前まで案内された。
そして陛下は開口一番、お礼の言葉を言いつつ、頭を下げてきた。
「そ、そうだったね……実は、余と君は初対面ではない! 既に会っている!」
「え?」
いや、全く身に覚えが無いんだけど……。
「ルリルリ! バリ凄いじゃん! 陛下とお会いしたことあるなんて!」
「いや、リン……私、本当に身に覚えが無いんだけど……」
だって、私と会った異世界の人って、リン達意外だと……アリスさんぐらいしかいないはず。
それに、仮にも女王陛下と会っていたら忘れるはずもない……。
「あの、いつお会いしましたか?」
「あぁ、まずは余のこの姿を見てくれたまえ……『フォーンオトルスドラーム!』」
陛下が謎の呪文を唱えると……陛下の体は、光に包まれた。
そして、陛下の身長が急激に低くなり、背中がまるでダンゴムシのように丸まっていっているのが分かった。
やがて光が晴れ、陛下の姿は……先ほどとはまるで変っていた。
大きめのローブを身に纏い、杖を突き、その見た目はまるでか弱い老人のようだった。
「あ、貴方は……」
……私は、その姿に身に覚えがあった。
『……申し訳ございませんが、香田公園はどこですかえ?』
『ありがとうねぇ……やっぱり日本の人は優しいねぇ』
この人……この間、香田公園まで運んだご老人だ。
私は動揺の余り、黙り込んでしまった。
「これで……思い出したかえ?」
「え、えぇ……思い出しました……」
私はどう反応すればいいのかわからず、何とも言えない反応をしてしまった。
す、凄い……こんな一瞬で、まるで別人に……あ! そういえば……。
『その人は本当にすごい人でね、一般人に成りすまして市民の不満を聞き出したりとか、スラムに自ら出向いて炊き出しを行ったりとか、とにかく国民の言葉を聞こうとバリ努力している人なんだ!』
一般人に成りすます……つまり、そういう事だったんだ!
陛下は私が理解したことを察すると、老人の姿を解き、元の姿に戻った。




