第210話 王の再臨
「さ、いらっしゃいませー!!」
ゆっくりと歩いていると、私の後ろの従業員専用扉が開かれ、威厳のありそうな声が聞こえた。
びっくりしてしまい、つい後ろを振り返った。
そこに立っていたのは……白い髪の人物だった。
そして、頭から、猫の耳と兎の耳が生え、片手が犬、もう片方の手が人間のように見えた。
あれ? こ、この人……どこかで見たような……。
『これが……ダイヤ陛下……』
『結構お若い国王なんだね』
『若いかなぁ? アタシが聞いた限りだと……420代って聞いた気がするけど……』
こ、この人……まさか……。
「だ、だだだだ……ダイヤ陛下!?」
リンは大声を上げ……その人物の前で、無意識に跪いた。
そう、この人は……前にキセノンが似顔絵を描いてくれた……サンルートの国王、『ダイヤ・サンルート』にそっくりだった。
……いや、そっくりじゃない、名札には「サンルート」と書かれている……サンルートの国王陛下はみんなの話を聞く限り、サンルートの象徴……安易に国の名前であり、王の名字である名前を名札に使用するなんて考えられない。
「よしたまえ、もう余は陛下などではない……このスーパーの従業員だ」
サンルート陛下は……リンに向かって前かがみになり、そんなことを言った。
リンの耳には陛下の言葉が聞こえていると思われるが……立ち上がることはなかった。
ど、どうしよう……他のお客さんは、私たちを白い目で見ている……そうだ。
「あ、あの……本当に、サンルートの国王……なんですか?」
私が陛下に質問をすると……陛下は、驚いた表情で私を見つめ、両手で私の手を掴んだ。
「あ、貴方は……あの時の!!」
「……え?」
陛下はまるで私を命の恩人かのような言葉を発した。
……あの時? あの時って……どの時?
「し、失礼ですが……私たち、初対面では?」
「あぁ……そういえば……訳を話さないとな、ちょ、ちょっと店の外まで来てくれないか? その連れも一緒に!」
「え!? えぇ……いいですけど」
「よし! ついて来てくれ!」
私はリンを立ち上がらせ、陛下と共に店を出た。




