第206話 ゴルドの朝食
「ふぁー……おはよう」
「あ、おはよう! ルリルリ!」
「今……ゴルドちゃん……朝食……作ってる」
……結局昨日の夜はあまり眠れなかった。
既にみんなは起きていて、朝食の準備を始めていた。
「叔母さんは?」
「琥珀はんなら寝てもろうとるで、流石に無理してきてもらうわけにもいかへんし」
「まぁ、そうだよね」
確かに、病人に無理させるわけにもいかないか。
「それにしても酷いわぁ、ウチらが手伝うって言うたら、『お前らは手伝うな』って……」
「ほんと、バリ酷いよねー、せっかく体力がつくように『お味噌汁の中に練乳を入れよう』としてたのにー……」
「いや……妥当な……判断」
うん、これはキセノンの言う通りかも……。
「ほいよ、朝食できたぞ! 各々持って行ってくれ!」
「ありがとう、ゴルド」
……思ったんだけど、ゴルドの身長でどうやって料理してるんだろう?
踏み台とか用意してるのかな?
台所へ行くと、味噌汁に目玉焼きとベーコンとほうれん草の炒め物が用意されていた。
炊飯器からは炊き立てのご飯ができていていた……叔母さんに炊飯器の使い方とか教わったんだね。
全て盛り付け、私たちは食卓に着いた。
「それでは今日はワシが……『我らが命の為に犠牲になったすべての生物、そしてそれに関わったすべての人に感謝申し上げます』、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
ゴルドの掛け声に合わせ、私たちは感謝の言葉を述べる……叔母さんがいないと、なんか寂しいな。
ま、とりあえずいただくとしよう……さて、ゴルドが作った料理の出来は……美味しい。
味噌汁も目玉焼きも、この炒め物も……朝ごはんらしく味は抑えられていて、だからと言って薄味ではない……絶妙なバランスだった。
ゴルドは孤児院で料理していたって言ってたし、叔母さんの手伝いもしていたからか、料理の腕には自信があるのだろう。
「とても美味しいよ、ゴルド」
「ふん、まぁ、当然だ」
「ふふふ」
ゴルドは恥ずかしいのか、箸の進みが早くなったように見えた。
全く、素直じゃないね。
「そういえばルリルリ、今日は大学院あるの?」
「今日は休みだよ」
「そうなんだ! じゃあ今日はみんなでハクハクの看病だね!」
「そうだね」
家にこれだけの人数が居れば、叔母さんの体調も早く回復するだろう。
もしも私一人で、なおかつ大学院の日だったら……想像したくないな。




