ドワーフの過去 その12 ~現実、そして前進~
「おい……諦めるのか?」
ワシはふと、姉ちゃんにそう声を掛けた……すると、姉ちゃんは清々しい顔を見せた。
「まぁ、死ぬだろうね、私は……」
「……」
ワシは感極まってしまい、姉ちゃんの手を掴んだ。
「そんなこと……言うんじゃねぇよ!!」
彼女は、現実を受け入れていた……そんな姿を見て、つい声を荒げてしまった。
しかし、彼女は、そんなワシの姿を受け入れるかのように……手を伸ばした。
「別に私は諦めたわけじゃないさ……死ぬことは分かってる、それはどうにもできない……なら、少しでも、アンタや息子と長くいられるように……頑張ってみるよ」
「……うぅ」
ワシはそのまま……泣き崩れた。
☆
そんで……受付嬢の女は、そこから数か月後……呆気なく死んだ。
だが、彼女なりに頑張って生きてこれたとは思った……医者も「よく頑張った方だ」と言っていた。
……ワシは悲しくて仕方が無かった、数か月たっても、まともに食事が喉を通らなかった。
そんな姿を見て、パーティの奴らは心配そうな声を上げた。
「なぁ、ゴルドはん……そんな悲しまなくてもええやんか」
「うん……もう……数か月……経った……切り替えないと……」
「で、でもよ……」
「一途な奴やなぁ、気持ちは分かるけど、切り替えへんと、前に進まへんで」
「うん……ラピスちゃんの……言う通り……悲しみ……乗り越えて……新しい……恋……探そう」
……この時のワシは、まさかガキどもに励まされるとは思わなかった。
「だとしてもよ、あいつ並みに良い女……見つかると思うか?」
「きっと見つかるよ! ゴル爺! 元気出しなよ!」
「お、おう……」
3人に励まされたワシは、少々納得いかなかったが……前に進むことにした。
「さ、ダンジョン行こ!」
「あ、待ってーな!」
「うん……行こう……」
3人の後を追い、ワシはダンジョンへと向かった。
新しい恋……すぐに見つかるのだろうか? ワシは信じられなかった。
「うーん……そんな事、世界が変わらねぇ限り、起こらねぇだろうな」
そんなことを呟きつつ、走り出した。




