ドワーフの過去 その11 ~病、再び~
その日、なんとかダンジョン探索を終えたワシらは、そのままギルドへ報告に向かった。
「いやぁ、ほんまに、今日はほんまにありがとうな、ゴルドはん……それに……なんか誤解してたみたいで、ほんま申し訳ない」
「別に気にしてねぇよ、テメェの事情を考えたら、そんな風にもなるさ」
報告を終えると、開口一番、ラピスがワシに謝罪をし、頭を下げてきた。
別にそこまでしなくてもいいと思うんだがな……。
「あの、よければやけど……このまま一緒にパーティ組まへん?」
「なんでだ? ワシは男だぞ? また放心状態になるんじゃねぇか?」
「か、からかわんでええねん! 別にアンタは無害やって分かったし……今後そういう目的で男がここに入ってくる可能性もあるし……まぁ、魔よけみたいなもんや!」
「魔よけってなんだよ!」
やっぱりこいつの目に見えるワシってなんなんだ?
そんなことを考えていると、リンが元気よく手を上げた。
「はいはーい! アタシもゴル爺がパーティに入ることには賛成! ノンノンは?」
「うん……私も……いいと……思う」
キセノンも賛成の意を示し、全会一致となってしまった。
「じゃあ決まりだね!」
「お、おい! 勝手に決めんなよ! ……ま、せいぜい足引っ張らないようにしろよな!」
「うん! よろしくね! ラピラピもいいよね?」
「もちろん! ええで! 改めてよろしゅうな」
……こうして、ワシは正式にこのパーティに入ることになった。
☆
そこから大体数十年、このパーティで活動した。
本当にいろいろなことがあった……風邪でぶっ倒れたり、リンとラピスが泥みたいな飯作ったり、キセノンがギルドのお偉いさんを吹っ飛ばしたり、ワシが良い女を見つけてついていったら迷子になったり……。
んで、数十年立ってると、こういう事も起きる。
「ゴホゴホ……ゴルド……来てくれたんだね」
……受付の姉ちゃんが病気になった。
とは言っても年齢を考えたら仕方がないともいえる……むしろ、ここまでよく生きてこれたものだと言いたい。
「息子さんは? いらっしゃったんですか?」
「あぁ……少し前にね……にしても……あんなに小さかった子が……今や子を持つ親とはね……しかもその子どもも……もうじき結婚して子どもが生まれるみたい……長生きするもんだね……」
「90年と言っても、ワシからすれば全然若いですよ」
「そうかい……」
……人間で90歳ともなればそれなりに長い期間を生きている。
ということは……彼女の体も、既に限界が来ているはずだ。
「医者が言ってたんだけどね……もう年齢が年齢だし、1年生きてれば運がいいってさ」
「……」
ワシは姉ちゃんの今の姿を見て、お袋を思い出した。
ワシは……なんとかお袋に生きてもらいたいと思って、迷信を信じて山の中に入り……そして、お袋の死ぬ間際を見届けられなかった。
……その時のワシは、現実を受け入れられなかったと、今振り返って思う。




