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現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた  作者: 立風館幻夢
第8章 立ち上がライズ! ドワーフじゃーないと!
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ドワーフの過去 その3 ~エデンの実~

「これは……かなり重体です、手術をしようにも……治る可能性はかなり低いでしょう」


 医者の言葉を聞いたワシは、思わず手が出てしまった。


「おい……なんだよそれ……お袋は助からねぇって言いてぇのか!!」

「に、兄ちゃん! 落ち着いて……」

「テメェは医者だろ!? 何とかならねぇのかよ!!」

「落ち着いてってゴルド兄ちゃん!!」


 弟分と妹分がワシを引き留めようとしたが、気持ちが高ぶっていたワシは、そんな制止をものともしなかった。

 医者はおびえた様子で、ワシをただ見つめていた。


「おい!! なんとか言えよ!! 治る方法があるなら言えよ!! ワシは、お袋が助かるなら……どんなことだってやってやるよ!!」


 ワシの怒号を聞いた医者は、震え声でこんなことを言ってきた。


「……エデンの実」


 ……医者の言葉を聞いたワシは、一瞬冷静になった。


「……それはなんだ?」

「う、噂で聞いたんですけど……ここから数百メートル離れた……ほら、『ヨークの山』、あるじゃないですか、あ、あそこに、エデンの実っていう、どんな病気も治せる果実があるとか……ないとか……」


 医者の言葉を聞いたワシは、覚悟を決め、物置へと向かった。

 その話が本当ならば、お袋が救えるかもしれない。

 その言葉に賭け、ワシは使えそうな武器が無いかと思ったのだ。


「ちょ、ちょっと兄ちゃん! 何する気?」

「エデンの実を探しに行く」

「はぁ!? 何言ってんの!!」


 弟分はワシを止めようとするが、周りが見えていなかったワシは、それに目もくれず、ただ使えそうな武器を探していた。


「……この斧、使えるな」

「兄ちゃん、マジで行く気なの?」

「これでお袋が治るなら……やってやる、お前は医者とお袋を見てろ、いいな?」

「ちょっと待ちなって! なら僕も……」

「いらない、ワシ一人でやる」

「ちょ、ちょっと兄ちゃん!!」


 弟分の制止を振り切り、ワシは斧を片手に、孤児院を出た。



 数時間かけて、ヨークの山についた。

 この山には、山の奥深くにダンジョンがあり、モンスターが常にいる。

 ダンジョンを破壊すればいいのだが、どうも近づけず、上空から侵入を試みようにも、モンスターが手ごわく、未だ破壊できないでいた。

 そのため、王国政府は、この山には熟練の探索者以外は近づかないように知らせていた。


「この中に……お袋を治す薬が……」


 いくら政府が近づくなと言っても、今はお袋の命が掛かっている。

 ワシは覚悟を決め、山の中へと入った。



 山を登り始めて数十分。

 早速モンスターがお出迎えだ。

 相手はゴブリンの群れ……いくら弱いモンスターといえど、探索者でなければ対処は難しい。

 ワシもそのくらいの知識はあった……が、気持ちが高ぶっていたワシを止められる存在は、この場にはいなかった。


「そこをどきやがれ!!」


 ワシは斧を振り回し、ゴブリンどもを消していった。

 端から見たら素人の攻撃、しかし、奴らには効果絶大だった。

 奴らはワシのいい加減な戦いぶりに恐れをなしたのか、一目散に逃げて行った。


「待ってろ……お袋……必ず助けて見せる……」


 ワシは斧を引きずり、再び歩き出した

 モンスターが現れたら倒し、また歩き出し……。

 それの繰り返し、飲まず食わずだったが、不思議と空腹感は無かった。


「お袋……お袋……」


 ワシは諦めたくなかった。

 お袋が生きてさえくれれば、ワシの命なんてどうなってもいい。

 ここまで生きていけたのはお袋のおかげなんだ、ここで恩返しできなくてどうするんだ。

 そんな気持ちで、歩き続けていたのだが……。


「お……袋……」


 意識が薄くなっていき、突然の眠気に襲われたワシは……目の前が真っ暗になった。

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