ドワーフの過去 その２ ～病～
……ある日の朝の事。
ワシらはいつも通り起床して、朝の支度をしていた。
年長の奴らが朝食の準備、もう一つ下の世代の奴らは年少者の面倒を見る。
そんないつもの光景なのだが……何かが足りない。
そう、この施設の中心人物……お袋の姿が見当たらないのだ。
「ねぇ、兄ちゃん。お袋……どうしたんだろう？」
「……ちょっとワシが様子を見てくる、お前は朝食でも食って待ってな」
「うん……」
ワシも違和感を覚え、お袋の部屋へと急行した。
「お袋！ 朝食の時間ですよ！」
部屋のドアをノックし、声を掛けるも……返事が無い。
何やら胸騒ぎがした……ワシは思わず、ドアを慎重に開けた。
「……お袋？」
……お袋は、部屋にいた。
しかし、様子が明らかに違っていた。
過呼吸で、汗を大量に出していた。
胸の辺りを必死に抑え、痛みに耐えているように見えた。
「お、お袋！！」
ワシは思わずお袋に近づいた。
「ど、どうしたんですか！？」
「い、痛い……」
「どこが……どこが痛いんですか！？」
ワシは動揺を隠せなかった。
愛するお袋が……何かに苦しんでいる。
その様子をただ黙って見ていられなかった。
「兄ちゃん！？ どうしたの！？」
「た、大変だ……お袋が……お袋が……」
「お、落ち着いて……と、とりあえず、お医者さん呼ぼう！」
「あ、あぁ！」
☆
年長の奴らが医者を呼びに行き、ワシは他の子どもたちを集め、お袋の現在の様子について話した。
「じゃ、じゃあお袋……病気なの？」
「そ、そんな……お袋、死んじゃうの？」
「うわあああああああああああん！！ そんなの嫌だよ！！」
子どもたちは、お袋の容態に不安が高まり、騒ぎ出した。
「お、落ち着け！ まだ死んだと決まったわけじゃねぇ！ 医者が来るまでお前らはここで待機だ、いいな？」
「でも……」
「大丈夫だ！ お袋は必ず助かる！ そう信じろ！」
ワシは子どもたちを落ち着かせようと、なんとかその場を凌いだ。
だが、不安なのは、ワシも同じだった。
お袋はこのまま死んでしまうのだろうか？ もしも死んだら、こいつらはどうなるのか？ 医者は果たして、お袋の病気を治せるのだろうか？
そんな不安が過る中、医者が到着し、早速お袋の体を見てもらった。
ワシを含む年長者が医者と同行し、後の奴らは部屋で待機させておいた。
医者の表情は……かなり険しかった。
「これは……かなり重体です、手術をしようにも……治る可能性はかなり低いでしょう」
医者の言葉を聞いたワシは、思わず手が出てしまった。
