第197話 杞憂
「一通り一般人を安全地帯に送り届けられたかな……後残りの人は……」
私はヒューマンシーカーの姿で、捜索を行っていた。
モンスターに襲われる前に、1人でも多くの人を助け出さないと……。
そんなことを思いつつ、走っていると……
「あ、あれは……」
巨大な岩肌の上に、輝く宝石……アレは間違いない、このダンジョンを制御している魔石だ。
「かなり高い位置にあるみたいだね……ここは」
私は巨大化アプリを起動し、カードを翳した。
アプリを起動させると、『イッツ巨大化タイム』という音声と共に、和風のBGMが流れ始めた。
『アレはなんじゃ? 鎧武者! ヒューマンウォーリアー!』
そんな音声と共に、私は巨大な鎧武者に変身した。
「よし、この魔石を壊せば元に戻るはず!」
私は刀を振りかぶり、巨大な魔石を破壊した。
魔石の破片が飛び散り、キラキラと輝く雨のようになった。
「よし、これでひとまず安心……かな」
とりあえずこれでダンジョンは大丈夫だ……だが、病院にいた人たちは、みんな無事なのだろうか?
体が弱い人が多数を占めているはずだ、今の銀次くんのように。
そんな不安が過る中、私の周りに光が覆った。
「今は、全員の無事を祈るしかないか……」
そんなことを呟きながら、私は元に戻るのを待っていた。
☆
「……ん、ここは、病院の中か」
気が付くと、私は病院の通路にいた。
とりあえず、みんなを探さなきゃ……。
「リン! ラピス! ゴルド! キセノン! 叔母さん!?」
手当たり次第に扉を開け、みんなを探した。
ここは病院であり、静粛な場所でなければならないのは分かり切っていた。
しかし今は、みんなを探すことが先決だと考えた。
みんなを呼び掛けながら、手当たり次第に探した。
すると、私の呼びかけが聞こえたのか、こんな声が聞こえてきた。
「ルリルリ!」
「下やで!」
「みんないるぞ!」
「瑠璃ちゃん! 早く来て!」
……どうやら下のロビーにいるらしい、私は足早に、そこに向かった。
☆
「ルリルリ!」
「リン!」
ロビーに降りると、リンが出迎えてくれた。
ロビーには、私たちが安全地帯に運んだ病院の人たちが集まっていた。
人々は、お互いの無事を確認できると、喜びを分かち合うように抱き合っていたり、安堵して肩を落としていたりしていた。
「病院の人に確認したら、全員無事だって言ってたよ」
「そうなんだ叔母さん、良かった……」
私が今一番心配していたこと……どうやらそれは杞憂だったようだ。




