第196話 応援してくれる人
凸凹している茨のような道を、私は一歩ずつ歩いている。
ま、間違えて一般人を潰したりしないよね? 慎重に歩いてはいるけど……。
……あ、あれ……病院の人じゃない!? なんか、岩肌の物陰から人が見えたような……。
「すみませーん! 病院の方ですか?」
私がそう叫ぶと、一般人……お医者さんと患者さんと思われる人が数人出てきた。
警戒心MAXなように見える……まぁ突然得体の知れない巨大なロボが声掛けてきたら警戒するか……。
私は警戒心を解いてもらおうと、元の大きさに戻り、変身を解除した。
「大丈夫ですか!?」
「あ、貴方一体……」
「皆さんを助けに来ました」
「そ、そうですか……」
お医者さんは困惑しつつも、納得したようだった。
「怪我人は? 病気の人は?」
「あ、あぁ……この通り患者さんが数名いて、このままじゃ移動しようにも……」
「任せてください」
お医者さんの言葉を聞き、私は再び巨大になった。
「さぁ、乗って!」
私はお医者さんたちに向かって掌を翳し、乗るように指示した。
お医者さんたちは警戒しつつもゆっくりと手にほらに乗ってきた。
全員乗ったことを確認し、私は彼らを落とさないように、安全地帯へと運び出した。
☆
一通り一般人を安全地帯へ運び、しばらくすると、リンとラピスと合流した。
お互いに変身解除し、生身で対面した。
「ルリルリ~!」
リンは私を見るや否や、両手を広げて飛び込んできた。
「ど、どうしたの?」
「聞いたよ~ヒスヒスたちが親衛隊ってのを結成したって話~!」
「そ、それがどうしたの?」
「アタシとラピラピを応援してくれる人がいないんだよ~」
あぁー確かに、この2人を応援してくれる人はいないな……って待てよ。
「ラピスには美月ちゃんたちがいるんじゃない?」
「あ、せやなぁ……ということは、おらんのリンはんだけやんか」
「そんなぁ~……」
リンはかなり凹んでいるようだ。
うーん……なんて声掛けようか? あ、そうだ。
「リン、リンを見てくれている人は絶対にいるよ」
「ほ、ほんと?」
「うん、それに、翡翠ちゃんたちだって、貴方の事を全く見ていないわけじゃないんだからさ、単純に一番応援したいのが私だったり、キセノンだったりするだけだよ」
「うーん……なんかバリ複雑……」
「それにさ……リンを応援してる人は、目の前にいるじゃない」
「……え?」
私はリンの頭を撫で、応援してくれている人が誰なのかを遠回しに教えてあげた。
リンも察したのか、暗かった表情が一変、満面の笑みに変化した。
「だよね! 応援してくれている人……バリすぐ近くに居たね!」
「う、うん……」
リンは私を抱きしめる力を強め、思いっきり顔を近づけてきた……これは。
「ありがとう、ルリルリ……バリ大好き!」
「わ、私も……大好き……だ……んん!?」
リンは、あまりの嬉しさに、唇でその思いをダイレクトに教えてきた。
私の口は塞がれ、リンは思いを伝えたいがあまり、口の中の筋肉を私の口内に押し付けてきた!?
私は思わず、リンの肩を押し、離れさせた。
「ちょ、ちょっとリン!? 何考えてるの!?」
「えへへ~ちょっと気持ちが高ぶっちゃった」
「……」
何考えてるのこの子!? ちょっと怖いんだけど……。
「ほな、ウチもリンはんの事、めっちゃ応援しとるでー」
「ラピラピも!?」
「当たり前やんか、ずーっと一緒やったろ?」
「ありがとう! ラピラピも大好き!」
……2人もお互いの思いを伝えるかの如く、唇を重ね合わせる。
ほんとに……モンスターの攻撃には慣れても、このキス魔の攻撃は慣れない……。
「と、とりあえず! まだ一般人がいるかもしれないから、もう一回行くよ!」
「うん!」
「はいよ」
私たちは再び巨大化し、一般人の捜索を始めた。




