第191話 「行け!! 銀次!!」
「む、無理だよ……あんなの……おじちゃんでも……」
……銀次は、ただ見つめるしかできなかった。
ゴルドは、損な巨大な敵を見ても……少し余裕そうに見えた。
「来やがったか、だがな、デケェのはテメェだけじゃねぇんだぜ?」
ゴルドはカードを取り出し……腕輪を弄り始めた。
『イッツ巨大タイム!』
そんな音声と共に、ロック調の音楽が流れ、ゴルドはそのBGMをバックに、腕輪にカードを翳した。
『巨大な祭りだー! ドワーフカブト!』
謎の読み上げ音声と共に、ゴルドは巨大な黄色いカブトムシに変化した。
「な、なにあれ……なんか……かっこいい、かも」
銀次はそんなゴルドの姿を……まじまじと見つめていた。
『来やがれ! ワシが相手だ!』
ゴルドは羽を広げ、最初に襲ってきたワイバーンを吹っ飛ばし、巨大なワイバーンに突撃する。
巨大な角が巨大なワイバーンに命中するも、仕返しとばかりに、炎を放った。
『あっつ! クソぉ……なかなかやるな』
ゴルドは背中から地面に倒れ、足をバタつかせていた。
しかし、すぐさまその状態から立ち上がり、再び羽を広げた。
『ここでやられるわけにはいかねぇ……テメェはここでぶっ倒す!』
ゴルドは諦めず、突撃を再び開始する。
銀次は、その様子をずっと見つめていた。
「すごい……あんなに大きくて、強い相手に……」
銀次は、ゴルドと自信を重ね合わせ、立ち上がった。
「自分を……信じる、僕には……できる!」
銀次はゆっくり、しかし力強く、前へ前へと前進する。
脚は震え、いつ倒れるかもわからなかったが……銀次はそれでも、歩き続けた。
『うおおおおお!! 銀次!!』
突然、ゴルドが叫び声を上げ、銀次はそれに反応し、上を見上げた。
ふと上を見ると、巨大なワイバーンが銀次に襲い掛かろうとしていたのだ。
銀次は脚をすくめるも、巨大なカブトムシとなったゴルドがワイバーンに突撃し、吹っ飛ばした。
『テメェを遮るものはワシが対処する! 銀次は歩くことに集中しろ!』
「お、おじちゃん……」
『行け!! 銀次!!』
巨大なカブトムシから声援を受けた銀次は、再び進み始めた。
一歩ずつ、一歩ずつ、正確に……。
彼を遮るものは、全てゴルドが対処した。
それ故に、銀次を止める存在は、どこにもなかった。
「できる……僕にはできる……」
銀次は倒れかけても、自己暗示を掛け、進み続けた。
そして……。
「来た……もうすぐだ……」
安全地帯の洞穴まで、後数十メートルのところまで来た。
そんな時、洞穴から、青き吸血鬼……キセノンが迎えに来た。
「銀次ちゃん……大丈夫?」
「だ、大丈夫……」
「よく頑張ったね……私……運ぶ……」
キセノンは銀次を抱え、安全地帯へ行く準備を整えた。
『キセノン! そいつを中に入れたら、こっちを手伝ってくれ!』
「わかった……待ってて」
キセノンは脚に思い切り力を入れ、羽を広げ、安全地帯の洞穴へと入り込んだ。
安全地帯の中で、碧と翡翠と再び合流し、銀次を2人に託したキセノンは、カードを取り出し、巨大化アプリを起動させた。
『イッツ巨大タイム!』
中華風の待機音をバックに、キセノンはカードを翳した。
『デカデカになるのはワキワキ! ヴァンパイアバット!』
キセノンが自ら打ち込んだ音声が流れ、巨大なコウモリに変化した。
『ゴルドちゃん……助ける……みんな……早く来て……』
キセノンは超音波を発し、戦いに加勢した。




