吸血鬼の過去 その9 ~お詫び~
「キセノンはんは、リンはんの事……どう思うとるんや?」
……え?
「リンちゃん……? なんで……リンちゃんの……名前が?」
「いや、ちょっと気になったんや、ウチと初対面の時とか、ダンジョン探索の時の行動とか……」
「……」
も、もしかして……ラピスちゃんは……。
「違うなら違うでええんやけど……キセノンはん……リンはんの事……好きなんか?」
「……」
そんな……私が、リンちゃんの事……。
「な……何……言ってるの?」
「いや、ちょっと気になっただけやねん、初対面の頃からずっと思ってたんや……変に目立とうとしたり、ウチにだけプレゼントを渡さなかったり」
「それが……どうしたの?」
「いや、ふと思ったんや、もしかしたら『好きな人を奪われたくないから、奪おうとしている奴を潰そうとしたんやないかな』って」
「そ……それは……」
私は、何も言えなかった。
……当たっている、私は、ラピスちゃんにリンちゃんを奪われたくなくて……それで……あんな態度を……。
しかも、そんな行動が原因で、ラピスちゃんは……死にそうに……。
なんてお詫びををすればいいのかわからない……許してなんて言葉だけじゃ足りない……。
私は……頭の中がぐちゃぐちゃになり、自分の服に手を掛けた。
「ちょ、ちょっと! 何しとんねん! や、やめーや……っていててて!!」
ラピスちゃんは、私の行動を止めようと立ち上がろうとしたが、怪我のせいかそのままベッドに横たわった。
私はそんな中でも、手を止めなかった。
やがて、私の上半身は、なにも身に着けていない姿となった。
「ラピスちゃん……」
私は服をベッドの上に放り投げ、ラピスちゃんの隣に横たわり、力を抜いた。
「な、なんや?」
ラピスちゃんはゆっくりと起き上がり、上から私を見つめている。
私には、覚悟ができていた。
「ラピスちゃん……好きにしていいよ」
「は、はぁ? な、何言うとんねん? す、好きにって……」
「今まで……酷いことした……お詫び」
「……」
ラピスちゃんは、私の言葉に困惑したのか、その場で固まってしまった。
私はその気にさせようと、言葉を続けた。
「躊躇……しなくていい……私なんか……ラピスちゃんの……玩具でいい……」
「キセノンはん……それ本気で言っとるんか?」
「うん……嘘じゃない……こんなんじゃ足りないのは……分かってる……でも……死ぬ以外で……詫びる方法……これしかない」
「……なんやねん、それ」
「いいから……好きにして……私は……どうなってもいい」
「……」
私が弄ばれるのを待っていると……ラピスちゃんは、体を震わせながら、脱ぎ捨てた私の服を掴み、私に向かって投げた。
「……このアホ!!」
ラピスちゃんは服を投げると同時にそう叫び、私を抱きしめた。
私の額には……生暖かい水滴が通り過ぎていた。
「ラピス……ちゃん?」
ラピスちゃんは……泣いていたのだ。
「そんなんでウチが喜ぶわけないやろが!! 何考えとんねん!!」
「……」
「ウチはただ仲間を守ることができてよかった、それだけでええねん!! 何自分の体差し出しとんねん!! そう簡単に売り渡すなや!!」
「え……私は……ただ……」
「ただも何もないわアホ!!」
ラピスちゃんは……私の顔を思いっきりビンタし、再び抱きしめた。




