吸血鬼の過去 その６ ～危機～
その日、私たちは、集落に現れたとされるダンジョンの処理のために探索を行っていた。
いつも通り、モンスターを倒して回る私たちだったんだけど。
「……ノンノン！」
私は1人で突っ走った結果……後ろから襲ってくるモンスターに気付かなかった。
まずい……このままじゃ……。
「あかん！」
……襲われると思ったその時、ラピスちゃんが私を吹っ飛ばし……代わりに攻撃を受けた。
ラピスちゃんは攻撃によって……血まみれになった。
「ラピス……ちゃん？」
私はその光景をただ見つめるしかなかった。
モンスターは、傷ついたラピスちゃんに向かって、追い打ちを仕掛けようとしていた。
……いけない、助けなきゃ……でも……。
「ラピラピ！」
……私があたふたしている中、モンスターどもの頭に矢が刺さり、煙となって消えていった。
「ノンノン！ ラピラピを抱えて！ ここは引くよ！」
リンちゃんの指示を聞いた私は、正気に戻り、血まみれのラピスちゃんを抱え、安全地帯へと撤退を始めた。
☆
「ラピラピ！ しっかり！」
「はぁ……はぁ……あかんわぁ、ウチ……もっと上手く立ち回れるようにせんと……」
「もう何もしゃべらないで！ さぁ、このポーション飲んで！」
ラピスちゃんは……ほぼ瀕死の状態だった。
「私の……せいだ」
この時、私は自分がやってきたことを思い出した。
1人で突っ走って……そして……ラピスちゃんは……。
私は……取り返しのつかないことをしてしまった。
謝っても……きっと2人は許してくれない……なら……相応の誠意を見せなきゃ。
私は、1人で安全地帯を飛び出した。
「ちょ、ちょっと！ ノンノン！」
「キセノンはん……どこに……行く気なんや……」
「ラピラピ！ 寝てなきゃ！」
☆
「どこだ……ダンジョンボス……最奥……」
私は一刻も早くこのダンジョンを消し去ろうと飛び回った。
「……いた……ダンジョンボス」
既に、数組のパーティが処理にあたっていた。
私も行かなきゃと思い、前に出た、その時。
「こんな……時に……」
私の進行を阻むように、モンスターの大群が壁を作っていた。
……そっちが邪魔をするなら、私だって、やってやる。
私は大群に向かって飛び込み、モンスターを殴り、蹴り、ぶん投げた。
奴らは煙になって消えていき、徐々に道が開けてきた。
このまま行けば……。
「ぐはぁ！？」
突然、後頭部に衝撃が走り、私は倒れた。
振り返ると、モンスターが私に向かって攻撃を仕掛けていた。
いけない……このままじゃ……死んじゃう……でも……。
「当然の……報い……かな……」
これはきっと、神様のよる天罰なのだろう。
私はそれを受け入れようと……目を閉じた。
私は……攻撃を受け……無かった。
「……え？」
ゆっくりと目を開けると……斧を持った……小さい人が私の盾になっていた。
その見た目は……船長とどこか似ていた。
「おい、クソガキ。なにやってんだ」
その人物は……人間の男性をそのまま縮めたような人……ドワーフだった。
「……あなたは？」
「ワシはゴルド……ギルドの嬢ちゃんが『女の子だけのパーティがいるから見守ってくれ』とか言ってきたもんでな、断りきれんので、ずっとつけてたんだ」
「ギルドの……嬢ちゃん？」
「あぁ、受付の姉ちゃんだよ」
受付の姉ちゃん？ あの人間のお婆さんのこと？
「ほら、立てるだろ？ こいつらぶっ潰すぞ」
「は……はい……」
私は立ち上がり、戦う態勢を整えた。
「そういえばお前、名前は？」
「キセノン……」
「よし、行くぜ、キセノン」
「う……うん……」
私と……ゴルドと名乗る男性で、目の前にいるモンスターの大群を一掃した。
