吸血鬼の過去 その3 ~遺言~
その後、数十年、数百年という月日が流れた。
「きょうだい」の中で、極め続け、独立した者、違う道を見つけ、旅に出た者、私のように今でもお父さんの下に居続ける者に分かれた。
私はお父さんの下で修行を続け……己を極め続けた。
……そして、その日は突然訪れた。
「……そこまで! しばらく休んでいなさい」
試合を終え、きょうだい達はその場に座り込んだ。
お父さんは……建物の中に入っていった。
……しばらく休んでいると、違和感に気付いた。
……お父さんが、戻ってこないのだ。
違和感を覚えた私たちは、建物の中に入った。
……そこで見たのは。
「……お父さん!」
その場に倒れているお父さんだった。
きょうだいでお父さんの腰を上げさせようとするも、お父さんはまるで力を失っているようだった。
「……お父さん! ……お父さん!」
私はお父さんの頭を押さえ、これ以上ない大声でお父さんを呼び掛けた。
その声が聞こえたのか、お父さんは……ゆっくりと目を開けた。
「……お前たち」
お父さんの声は……かなり衰弱しているように聞こえた。
「俺の体は……もう限界だ……」
「それは……どういう……」
「数百年前から……俺の体は……病に侵されていた……魔法で自分の体に鞭を打っていたのだが……どうやら限界のようだな……」
私たち「きょうだい」は、お父さんに向かって叫び続けた。
「お父さん! 死んじゃ嫌だよ!」
「父さん! 寝ちゃだめだ!」
「僕……お父さんに何もできてないよ!」
……そんな私たちの声に、お父さんは……ゆっくりと首を横に振った。
「俺は……お前らに……取り返しのつかないことをした……お前らに……敬われる価値なんて……ない」
「意味……わからない……どういう……」
「俺は……以前……王国お抱えの暗殺者だった……任務のために……国のために……多くの民を殺した……その民の中には……お前らの……実の……親も……」
「……」
お父さんの突然の告白に、私たちは絶句してしまった。
お父さんが……私たちの……実の親を? そんなこと言われても……。
……納得のできなかった私は、思わず大声を出した。
「それでも……私たちの……お父さんは……貴方です!!」
「……キセノン」
「確かに……実の親……殺した……かもしれない……でも……貴方は……」
目頭が熱くなり、自然と涙も零れてきた。
他の「きょうだい」も、私に続いてお父さんに向かって叫んだ。
「そうだよ! お父さんは、私たちのお父さんだよ!!」
「実の親なんて知らねぇよ! 父さんは父さんだよ!!」
「お父さん……そんなこと言わないでよ!」
私たちはお父さんに向かって叫び続けた。
しかし……そんな叫びを尻目に、お父さんの目は徐々に閉じて行った。
「お前たち……強くなりなさい……」
「……強く?」
「こんな小さな世界ではなく……もっと広い世界を見なさい……それが……俺の……最後の……試練だ」
……私たち「きょうだい」は、お父さんの言葉の意味が分からなかった。
お父さんは、「最後の試練」を伝えると……そのまま目を閉ざし、動かなくなった。
「お父……さん? ……お父さん!」
私たち「きょうだい」は、お父さんを呼び続けたが……お父さんは、目を開けることなく、そのまま深い眠りへとついてしまった。




