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現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた  作者: 立風館幻夢
第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!
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吸血鬼の過去 その3 ~遺言~

 その後、数十年、数百年という月日が流れた。

 「きょうだい」の中で、極め続け、独立した者、違う道を見つけ、旅に出た者、私のように今でもお父さんの下に居続ける者に分かれた。


 私はお父さんの下で修行を続け……己を極め続けた。


 ……そして、その日は突然訪れた。


「……そこまで! しばらく休んでいなさい」


 試合を終え、きょうだい達はその場に座り込んだ。

 お父さんは……建物の中に入っていった。

 ……しばらく休んでいると、違和感に気付いた。


 ……お父さんが、戻ってこないのだ。


 違和感を覚えた私たちは、建物の中に入った。

 ……そこで見たのは。


「……お父さん!」


 その場に倒れているお父さんだった。

 きょうだいでお父さんの腰を上げさせようとするも、お父さんはまるで力を失っているようだった。


「……お父さん! ……お父さん!」


 私はお父さんの頭を押さえ、これ以上ない大声でお父さんを呼び掛けた。

 その声が聞こえたのか、お父さんは……ゆっくりと目を開けた。


「……お前たち」


 お父さんの声は……かなり衰弱しているように聞こえた。


「俺の体は……もう限界だ……」

「それは……どういう……」

「数百年前から……俺の体は……病に侵されていた……魔法で自分の体に鞭を打っていたのだが……どうやら限界のようだな……」


 私たち「きょうだい」は、お父さんに向かって叫び続けた。


「お父さん! 死んじゃ嫌だよ!」

「父さん! 寝ちゃだめだ!」

「僕……お父さんに何もできてないよ!」


 ……そんな私たちの声に、お父さんは……ゆっくりと首を横に振った。


「俺は……お前らに……取り返しのつかないことをした……お前らに……敬われる価値なんて……ない」

「意味……わからない……どういう……」

「俺は……以前……王国お抱えの暗殺者だった……任務のために……国のために……多くの民を殺した……その民の中には……お前らの……実の……親も……」

「……」


 お父さんの突然の告白に、私たちは絶句してしまった。

 お父さんが……私たちの……実の親を? そんなこと言われても……。

 ……納得のできなかった私は、思わず大声を出した。


「それでも……私たちの……お父さんは……貴方です!!」

「……キセノン」

「確かに……実の親……殺した……かもしれない……でも……貴方は……」


 目頭が熱くなり、自然と涙も零れてきた。

 他の「きょうだい」も、私に続いてお父さんに向かって叫んだ。


「そうだよ! お父さんは、私たちのお父さんだよ!!」

「実の親なんて知らねぇよ! 父さんは父さんだよ!!」

「お父さん……そんなこと言わないでよ!」


 私たちはお父さんに向かって叫び続けた。

 しかし……そんな叫びを尻目に、お父さんの目は徐々に閉じて行った。


「お前たち……強くなりなさい……」

「……強く?」

「こんな小さな世界ではなく……もっと広い世界を見なさい……それが……俺の……最後の……試練だ」


 ……私たち「きょうだい」は、お父さんの言葉の意味が分からなかった。

 お父さんは、「最後の試練」を伝えると……そのまま目を閉ざし、動かなくなった。


「お父……さん? ……お父さん!」


 私たち「きょうだい」は、お父さんを呼び続けたが……お父さんは、目を開けることなく、そのまま深い眠りへとついてしまった。


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