第163話 狼狩り
「ゴルド! ごめん!」
「え? ちょ……」
私は跳び箱のようにゴルドを飛び越え、そのままゴルドの目の前にいたコボルトどもを切りつけた。
ラピスは地に足が付いたと同時に、舞うように周りにいたコボルトどもを切りつけ、殲滅させていた。
……って、あともう1体こっちに来てる! やばい!
「危ないよっと!」
奴をけん制しようとしたその時、奴の頭に矢が命中し……煙になった。
す、すごい……もしかしてリン、ここも計算に入れてた?
「よし! 殲滅完了!」
ふとリンの方に振り向くと、暗闇の中でも、ガッツポーズを決めているのが見えた。
「……ったく、人使い荒いぜ」
「まぁまぁ、大活躍だったよ! ゴル爺!」
「……そうかよ!」
「瑠璃はん、ようやったな!」
「ラピスもね!」
私たちはお互いにお互いを踏め称えた。
それにしても、リンの指示がなければ、大苦戦を強いられるところだった……。
「リン、凄いね、いつも暗闇ではこんな感じなの?」
「うん! 自慢じゃないけど、アタシの目は地上のどのエルフよりもバリ鋭いんだよ!」
「へぇー……」
リンはまさに千里眼の持ち主だな……。
「リンはんみたいなエルフは大体が狩猟で生活しとるって言うしなぁ」
「えへへ~褒められても何も出ないよラピラピ~」
リンは照れくさいのか、頭をかいた……なるほど、狩猟民族ねぇ、地球でもマサイ族の人とかも視力が凄いって言うけど、エルフもそれに近いんだろうね。
「……ま、これでもキセノンの方がこういう場では活躍するんだがな」
「だね、ノンノンには敵わないかな」
キセノンには敵わない?
「それってどういうこと?」
「ノンノン含めて、吸血鬼の人は暗闇でもへっちゃらなんだよ」
「ふーん」
その辺りはコウモリと同じ感じなのだろうか? 彼らは超音波で獲物の居場所を探知するって言うけど……吸血鬼の人もそういう習性があるのだろうか? ……気になるな。
まぁ、今はそんなことを考えるよりも、先へ急ぐとするか。
「よし、この調子でどんどん進もう!」
私がみんなに呼びかけると、3人は同意の意思を伝えるように頷いた。
……そういえばキセノン、大丈夫だろうか? 安全地帯にいるといいけど……。




