表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた  作者: 立風館幻夢
第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!
182/424

第156話 土手

「はぁ……はぁ……」


 その頃、いかいやの近くの土手。

 瑠璃と同居している吸血鬼、キセノンは、動きやすい恰好をし、走っていた。

 曰く、「体が鈍るので鍛える」

 瑠璃が不在の数日間、キセノンはずっと同じところで走っていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 一通り走った後、キセノンは土手に座り込み、水分の代わりに血液を飲んだ。

 芝生に汗が染みわたり、息を整える。


「よし……あと……もうちょっと……」


 一通り休んだ後、再び走り出そうと立ち上がろうとした……その時、キセノンはあることに気付く。


「あの子……ずっと……いる」


 川の近く、そこに、褐色肌で短い黒髪、白い服を身に纏った子どもが、数日間、同じ時間同じ場所にいることに違和感を覚えた。


「あの……服……確か……本で……見た」


 その子どもが着ていた白い服、それは、所謂「道着」だった。

 なぜここにそんな姿をした子どもが? キセノンは、気がかりになり、その子どもに近づいた。


「……ねぇ」

「うわぁ!?」


 後ろから声を掛けると、子どもは驚愕の声を上げた。


「貴方……ずっと前から……ここにいる……ご両親は?」


 キセノンは子供と目線を合わせ、質問をした。

 すると、子どもは、下を向いて……答えた。


「……別に、逃げたんだよ」

「……逃げた?」


 キセノンは、その子どもが言った「逃げた」と言う言葉に違和感を覚えた。


「何か……悩み?」

「……よくわからない」

「……よく……わからない?」


 キセノンは、子どもの一言に違和感を覚え、何か力になれないかと考えた。


「悩み……あるなら……聞く……貴方……名前は? 私……キセノン」

「……アタシは碧……『羽柴碧はしばあおい』……」

「碧ちゃん……いい名前」

「キセノンって変な名前……最近テレビで見る変な動物の人?」

「まぁ……そんなところ……今……日本の人のところ……居候してる」


 2人はお互いに自己紹介をし、キセノンは本題を切り出した。


「それで……逃げたって……何?」

「うん……アタシ、空手やってるんだけどさ、最近全然試合に勝てなくて……もう嫌になったんだ」

「なるほど……」


 キセノンは碧の悩みの内容をなんとなく理解したが、ここで悩みを掘り下げるのは良くないと考え、他愛のない会話をから始めようと考えた。


「空手……って……突きと蹴りを駆使する……沖縄発祥の武道……だよね?」

「う、うん、そうだけど……」

「私……空手……よくわからない……だから……教えて」

「お、教える?」

「うん……私……鍛えるの……好き……だから……教えて」

「う、うーん……」

「……ダメ?」


 碧はキセノンの唐突なお願いに困惑した。

 しかし、教えて欲しいと懇願するキセノンの表情に熱意を感じた碧は、静かに頷いた。


「わかった、ちょっとだけだよ?」

「うん……嬉しい」

「じゃあ、立って」


 土手を舞台に、異世界人と日本人の空手の稽古が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ