サキュバスの過去 その15 ~最低な女~
「ウチは、最低な女や……」
外へと飛び出したウチは、そのまま家へと帰った。
勝手に惚れて、勝手にフラれて、勝手に怒って……なんて自分勝手なんや、ウチは……。
「ウチ、まだまだ子どもやな……」
もしも神様がこの光景を見ていたら、「お前はとんでもない大馬鹿者だ」って仰るんやろな……。
明日、どんな顔してアンはんと会ったらええねん……めっちゃ気まずいわ……。
「ラピス、入るで」
部屋で落ち込んでいるウチが気になったのか、オカンが部屋に入ってきた。
「どないしたんや、ラピス、いきなり帰ってきたと思ったらめちゃくちゃ落ち込んで……何かあったんか?」
「……」
オカンはウチの肩を掴み、問いかける。
今はその手が……とても暖かく感じた。
「なぁ、オカン……恋なんてしない方が良いと思ったこと、ある?」
「なんやねんいきなり……」
突然の質問にオカンは困惑の表情を見せた。
まぁ、そらこんな顔にもなるわ……変な質問してもうたな……。
きっと回答にも困るはずや……。
「……そりゃそんなこと、何回もあるわ」
「……オカン?」
……オカンの答えは、ウチにとって、かなり予想外やった。
「何年この世で生きてると思っとんねん、最初に恋をしたときは……そりゃそんな風に思ったわ」
「……」
「でもな、2回3回と続けていくと『こんなもんか』と思うもんやで」
「そ、そんなもんかいな?」
ウチはおかんの言っていることが、理解できなかった。
「でも……ウチ……」
「……なんかやったんか?」
「いや、あの……」
「なんやねん、はよ言わんかい!」
「え、えぇっと……」
ウチはオカンに圧倒され、すべてを白状した。
探索者ギルドの人に恋したこと、その人に旦那さんと息子さんがおったこと、そしてつい……恋した人を殴ってしまった事を話した。
するとオカンは……。
「あはははは!」
「わ、笑い事とちゃうわ!」
……腹を抱えて笑い出した。
「いやぁ、ラピス! 流石はウチの娘やな! ええ根性してはるわ」
「お、オカン?」
オカンは……どういうわけか、ウチを褒め称えた。
「探索者の女ぶん殴るなんて、相当な根性ないと無理やで! いやぁ、よくやったよくやった!」
「いや、恋した相手殴るってそりゃあかんことやろ」
「まぁ、それはマズい事やな、でもまぁ、その人との恋はそれまでやったってことで、別の恋探しや、別にラピスにはもっとええ相手が見つかるで」
「……」
別の恋……か。
せやけど、それを探そうにも、ここにとどまってても仕方がない気がするわ。
どないしょうか……。




