サキュバスの過去 その13 ~熱~
「アンはん……」
家に戻ると、今日の事を振り返った。
今日もアンはんに褒められた、めっちゃ嬉しい。
次はどうやったら褒められるんかな? どうやったらウチの事を見てくれるんかな?
どないしょう……どないしょう……。
「なんやねんラピス、なに珍妙な笑顔でうっとりしとんねん」
「お、オカン!?」
オカンの声を聞き、ウチは正気に戻った。
「ち、珍妙な笑顔ってなんやねん! というかおるならおるって言ってくれや!」
「さっき『ただいま』って言うたやろ、それより何考えとったんや」
「え、えっとな……」
あれ……ウチ、「珍妙な笑顔」でアンはんの事……考えとったんか? なんでや?
別にアンはんの事を考えるのは普通の事や、仕事仲間やし。
せ、せやけど珍妙な笑顔って……。
「……なんや、言いたくないんか?」
「あ、うん……」
うん、これは言いたくないわ、恥ずかしいし……。
「……ま、何考えとったかは大体予想つくわ」
「え!? ほ、ほんまか!?」
「あぁ、何年アンタの親やっとると思うねん」
……どうやら、オカンにはうちの考えていることは筒抜けのようや。
せやけど……そう簡単に分かるんかいな?
「ズバリ……『恋』やな」
「こ、恋!?」
ウチは思わず大声を上げてしまった。
「そ、そんなわけないやん!」
「あはは、顔真っ赤やんけ、図星やな」
「う、うぅ……」
図星……図星なんか?
ウチは、アンはんのことが……その……好きなんか?
そんな、そんなわけ……。
「まぁ恋をするのは自由やし、なんも言わんけど、はようまともな仕事着いてくれや、探索者なんていつ死ぬかわからんて、不安やねん」
「よ、余計なお世話や!」
ウチが探索者を辞める? そないなことしたら……二度と……アンはんと……。
あぁもう! ウチどないなっとんねん!
☆
「よ! ラピス!」
「お、おはようございます……」
次の日の朝、探索者ギルドへ向かうと、アンはんはいつものようにダンジョン探索の準備を進めていた。
どないしょう……今アンはんを直視できへん……。
「どうした? ラピス、体調でも悪いのか?」
「い、いえ! ウチはもう今朝から元気ですわ、あはは……」
「そうか? それにしては顔が赤いように見えるが……熱でもあるんじゃないか?」
「な、ないですよ! 全然! この通りピンピンしてますわ」
あ、あかん! 今アンはんの事考えたらあかん!
アンはんのことを考えると、意識してもうて顔が赤くなってまうわ!
意識するなや……意識するなや……。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫! 大丈夫です!」
「……」
アンはんは……突然、ウチの額を触ってきた!
えぇ!? と、突然なんや!?
「うーん……」
「な、なんですかいきなり!?」
「いや、熱があるかなと、ダンジョンで何かあったら大変だからな」
「そ、そんな心配いりまへんって!」
ウチは思わず、アンはんの腕を跳ね除けてしまった。
と、咄嗟に手が出てもうたけど、これ、嫌われたかな? あぁあかん! 今は冷静にならんと!
「ちょ、ちょっと外の空気吸ってきますわ、メンバー揃ったら言うてください!」
「あ、おい! ラピス!」
ウチはアンはんの制止の声を無視し、外に飛び出した。




