サキュバスの過去 その4 ~白状~
「ただいまー!」
「ラピス、昨日はちゃんと眠れたか!?」
朝、オトンとオカンが帰ってきた。
ウチはその日……一睡もできず、布団の中で芋虫のような体制で震えていた。
「ラピス?」
「どないしたんや?」
オトンとオカンがウチの部屋に入ってきたのか、声が大きく聞こえた。
せやけど、ウチは恐怖のあまり、その声すらも聞こえなかった。
「ラピス! はよ起きや!」
「嫌! 嫌や! 怖い!!」
「……ラピス?」
オトンが掛け布団を引っぺがそうとした……せやけど、ウチは恐怖のあまり、それを手放したくなかった。
「ラピス、何が怖いんや? 嫌な夢でも見たんか?」
……夢だったらどんなにいい事やら……アレは現実だ。
周りに……欲に塗れた男が……。
「ラピス、何とか言わんかい!」
「言ってくれへんと、なんも言えへんで!」
……何も言いたくない、言ってしまったら、オトンとオカンの言う事を聞いていなかったことがバレてまう。
怒られたくないという気持ち、あんな恐ろしい事を話したくないという気持ち……色んな気持ちが、ウチの頭の中に過った。
ウチとオトンとオカンの攻防戦が繰り広げられる中、それの止めに入るように、玄関のノックの音が聞こえた。
『ラピスちゃん! 大丈夫かい!?』
……隣の人の声が聞こえる。
どうやら……あの男どもは帰ったようだった。
「……なんや? なんでお隣さんが……」
「……ラピス、何があったんや?」
……これはもう、言い逃れができへん。
ウチは掛け布団を抑えつけていた力を緩め……静かに起き上がった。
「と、とりあえず、応対してくるわ」
オカンはそう言って、玄関の方へと向かった。
ウチは……オトンに、昨夜の一部始終を白状した。
☆
「ラピス! 何してんのや!」
「だから言うたやろ! 夜の街は危ないって!」
「……すみません」
ウチはその場で怒られた。
当然や、言いつけを守らず、好奇心で外に出て、挙句の果てに襲われそうになって……。
「すみません……すみません……」
ウチはその場で何度も謝った。
2人の言う通り、夜の町はとても危なかった、怖かった、死ぬかと思った。
「……もうええねん、分かったんならええんや」
「……さ、稽古の時間や、最初は踊りや……涙拭いて、準備せぇや」
……ウチは静かに頷き、涙を拭いて、立ち上がった。
せや、こんなところで泣いている場合とちゃう、はよう一人前にならんと……。
一人前に……一人前に……。
……そう考えとったウチやったが、ウチはあることに気付いてしまった。
そう、ウチの人生が歪んでしまった……そして後悔した。
あの時、外に出るべきではなかったと……




