第129話 サキュバスの恐怖心
「あ、おおき……に……」
ラピスは……突然沈黙し、体が震え始めた。
……どうしたんだ?
ふと、財布を拾った人物を見ると……何とその人物は……「男性」だった。
短い髪に、高い身長……ラピスとほぼ同じくらいの背丈だ。
男性にしては少し低い気もするが……間違いない。
「あああ、ありがとうございます!!」
私は咄嗟に財布を受け取り、ラピスの前に立った。
「いいですよ、財布落とすのってショックがデカいですもんね、それじゃ!」
財布を拾ってくれた男性はそう言って……服屋の奥の方へと行ってしまった。
彼がどこかに行ったのを確認した私は、咄嗟にラピスの方へと振り向いた。
ラピスは……その場でしゃがんでいた。
「ラピラピ! しっかり!」
「ラピス! しっかりして!」
私たちは咄嗟にラピスの肩を掴んだ。
ふと、彼女の顔を見てみると……今にも泣きそうな表情をしていた。
……まずいな。
「リン! とりあえずラピスを外に出して! 私はお会計済ませておくから!」
「うん!」
リンはラピスを立ち上がらせ、外へと連れ出した。
私は急いでお会計を終わらせ、手早く袋詰めし、外へと飛び出した。
☆
一方、財布を拾った人物は。
「ごめん、待たせたね」
「もぉーどこ行ってたの?」
「ごめんごめん、財布を落とした人がいてさ」
財布を拾った人物は、一緒に服屋に来ていた連れの元へと合流し、買い物を続けた。
「全く……『お姉ちゃん』ったら、困った人を見つけるとすぐ周りが見えなくなるんだから」
「そりゃ、困ったときはお互い様でしょ?」
「それは……そうだけどさ」
そう……ラピスは財布を拾ってくれた人物を男性だと思っていたが……「彼」は「彼女」だった。
彼女は妹と共に、ある目的のために服屋に訪れていたのだ。
「もぉー、ここ、全然ダメ! やっぱりいつもの服屋じゃないと『踊った時』に映えないよー」
「わがまま言わないの、このご時世でやってる服屋なんてここぐらいなんだからさ、それとも……自作する?」
「えーお姉ちゃんも私も裁縫苦手じゃん! 私は毎回怪我するし、お姉ちゃんは『雑巾みたいな服』作るし!」
「あははー……そんなこともあったねー……」
2人は、ダンスのための衣装を買いに、服屋に来ていたのだ。
他愛もない姉妹の会話、2人はそrんなことをしつつ、服を吟味する。
「ごめん、私ちょっとお手洗い行ってくる」
「行ってらっしゃい」
妹はお手洗いに向かう……姉は妹を見届けた後、服を再び吟味し始めた……そんな中、それを妨害するかのように、2人の足元に魔法陣が現れた。
「……え?」
「な、なに……?」
2人は得体のしれないものを見て……動揺し始めた
「お姉ちゃん!」
「……『蛍!』」
2人の周りを光が覆った。




