第105話 戦闘再開
妊婦さんが男の子に向かって注意をする……どうやら息子さんらしい。
「なるほど、このお腹の子は、この子の弟か妹になるわけだね!」
リンがそう呟く。
……そうか、新しい命か、なら尚の事早めにダンジョンを消さないと。
そんなことを考えていると、入り口から多数の人々が見えてきた。
遠目で見ても、20人くらいはいる。
あれは……。
「……キセノン!」
先頭に立っていたのは変身解除したキセノンだった。
キセノン……この人たちを全員ここまで運んだってこと?
「……この人たち……一般人……一か所に……集まってた……危ないから……連れてきた」
「流石ノンノン! バリ凄いじゃん!」
リンの言う通り、凄いな……巨大化していたとはいえ、ここまでの人数を運べるなんて。
「コウモリのお姉ちゃん! ありがとう! 凄いかっこよかった!!」
「ねぇねぇ! あの姿もう一回なって!」
キセノンが助けたであろう女の子たちが、彼女に駆け寄っていた。
キセノンは、女の子たちに目線を合わせ、優しい笑顔で話しかけた。
「……この……空間……治まったら……もう一回……見せてあげる……今は……危ないから……ここにいてね」
「ほんと!?」
「約束だよ!」
キセノンは女の子たちの頭を撫で、約束代わりの指切りをした。
キセノンが助けた他の人たちは、何とも言えない表情で安全地帯の中央に集まった。
子どもたちはこんな状況でも元気だけど……大人はみんな不安だろうな、早く何とかしないと。
「……行こう、みんな。早くダンジョンを何とかしないと」
「うん!」
「ほな、集まったところやし、行きましょか」
「おうよ! さっさと片付けようぜ!」
「約束……したから……早く……終わらせる」
……私たちは安全地帯の外に出て、再び変身した。
☆
このダンジョンには、ゴーレムが多くいた。
ゴーレムと言っても、弱点の場所はバラバラだった。
背中だったり頭だったり……かなり考えながら戦わなければいけない敵だ。
みんなは戦い慣れているのか、即座に弱点を見つけてはそこに攻撃を仕掛けていた。
まるで流れるような作業……やっぱりプロはすごい。
「はぁ……はぁ……」
正直……考えながら戦うのは凄い疲れる。
「大丈夫? ルリルリ?」
「だ、大丈夫……」
リンが心配したのかこちらに近づいてくる。
4人はまだまだ余裕そうだった。
「まぁ、ゴーレムは考えながら戦うわけやし、最初はそうなるもんやで」
ラピスはそんなことを言って私を励ます。
ラピスの戦いぶりは傍目で見ていたが、まるで踊っているかのようだった。
私もああいう風に美しく戦いたいよ……。
「ルリルリ疲れてるし、一旦休もっか」
「せやな」
リンとラピスはそう言って、変身を解除した。
私もそれに合わせて、生身の体になった。
ふぅー……なんか重い荷物をようやっと降ろせたような感覚だ……。
「じゃ、ワシは周りのモンスターを倒しながら、一般人を探してるぜ」
「じゃあ……私も……」
キセノンとゴルドは、そう言ってモンスターを倒しに行ってしまった。




