第97話 災害対策とダンジョン出現
「ごめん、今日はほとんど売り切れみたい……多分、ダンジョンの出現が原因だね」
私はみんなに向かって状況を説明した。
「ダンジョン? それでなんで?」
リンはよくわかってないのか、私に質問をする。
すると、ラピスが私の意見を代弁してくれた。
「リンはん、ダンジョンはこの世界だと異様な存在や、テレビで言うとったやろ?」
「あ、そっか……でもなんでそれで売り切れ?」
「つまりやな……異様なものを目にすると、身の危険を感じるものなんや、身の危険を感じたら、まずどないする?」
「どうするって……」
ラピスはそれらしい例え話を展開した。
「ワシだったら……まずは安全なところを探すな」
「私も……そう……だね」
ゴルドとキセノンは例え話に即答する。
「まぁそうやろな、でも、この世界の人々はみんな安全な場所を持っとる……最初にここに来た時そうやったろ?」
「あ、確かに! みんなバリ大きい家持ってた!」
「せや、まぁ全員が全員ってわけではないやろな……せやろ? 瑠璃はん」
「まぁ……そうだね、でも8割方自分の部屋ぐらいは持っているはずだよ」
経済的に厳しくても、とりあえず寝床だけはみんな持っているはず。
例え隙間風が通るあばら家でも、ラピスの言う「安全な場所」に値する……かもしれない。
「安全な場所を持っとる……という事は、次はどないする?」
「うーん……アタシだったら……とりあえず、食料……あっ」
リンは気づいたのか、目が大きく開いた。
「つまり、みんなで全部買っちゃったってこと!?」
「そういうことや、それで、供給が追い付かなくなったってことや」
「み、みんなお金持ってるんだね……」
サンルートの価値観だと、買い占めできるほど経済的に豊かという考えなのだろうか?
そんなことを考えていると、キセノンが私の服を引っ張り、質問をしてきた。
「瑠璃ちゃん……なんで……みんな……略奪……しない?」
「りゃ、略奪!?」
なんて物騒な質問……私は思わず驚いてしまった。
「うん……いろんなところ……見てきたから……災害……起きると……大体の……国は……略奪……起きる」
「……」
うーん……まぁ日本の場合、「そんなことをして何になる?」って考え方が大多数だと私は考えるけど……。
「ま、略奪が起こらねぇのは、サンルートも同じだな!」
「せやなぁ、災害慣れしとるって感じや」
ゴルドとラピスがそんなことを言っている。
災害慣れ……まぁ、そうとも言うのかな?
サンルートってやっぱり日本と同様、地震とかよく起こるのかな?
「サンルートも地震とかよく起こるの?」
「せやで、建物は一応耐震性能を備えてるんやけど……ま、崩れてしまう建物も少なくはないで」
「へぇー……」
災害が起こる国はやっぱり、自分たちで対策を練っているんだな。
台風がよく起こる東南アジアやオセアニアとか……日本と同様に地震がよく起こる中国の雲南省とか四川省とか……それらの地域も、相応の対策を練っている。
世界は変われど、そこは皆同じか、当たり前と言えば当たり前だけど。
「ま、物騒な話は置いておいてさ! 次の所に連れてってよルリルリ!」
「あ、ちょっと……」
リンが私の服を引っ張り、スーパーの出口へと連れ出そうとした……その時だった。
私たちの足元に……魔法陣が出現した。
「こ、これは……」
「……ダンジョンだ!」
……驚いている間に、私たちは光に包まれてしまった。