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双界英雄伝説 〜二つの世界で一つの夢を見たい。〜  作者: 那莫姿エフエル
第一章 ”始動。『天津風』”
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逡巡と罰と野望と。

前回の通り連続投稿です。

「いいのか?奴ら放って置いて。」


合流したカナタは誡斗に妖を放置して良いのかと問う。それに対し誡斗は…


「いいのさ。あのくらいの妖は自分より強い奴がいる所を襲う事はない。ここにはもう来ないさ。」


誡斗は『自分より強い者がいる場所を襲わない』という習性を利用したのだ。

妖は強きものに従う。奴等よりも自分達が強い、それを知った以上、あの虫型妖はもうこの果樹園を襲わない。

そして先ほど救助した少女と共に、農家たちの元へと向かった。




「妖は追い払いました。ここに来る事はないでしょう。」

「皆様には果樹園だけで無く孫まで救っていただいたようで… 何とお礼を申し上げれば良いのか。」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けてくれてありがとう!」


あの後、女の子を無事に農家たちの所へ連れて行った。

農家たちは果樹園だけでなく、自身の孫まで助けられたことに感謝の言葉が見つからない様子。


「いえ、これは仕事ですから。」

「ではオレ達はこれで。」

「そうですか。この度は本当にありがとうございました。」


そう言い誡斗達『天津風』は風月の森を後にした。




そしてその帰り道…


「フゥ…」

「誡斗君? 大丈夫?」

「あぁ、まぁな。…さっきの頭目の妖は死なせちまったからさ。」


そう、誡斗は戦う前に「誰一人死なすな」とそう言った。それは人だけでなく妖に対しても言ったのだ。

誡斗が無駄な戦いを避けたいという性格なのは皆知っている。

だからこそ、そうした。相手が人であれ妖であれ無駄な殺生を禁じている。それが『天津風』なのだ。


だが、誡斗は今後の憂いを弾くために頭目の虫型妖を殺した。間違った判断とは思わないが、ああ言った手前、そして自己の思いからやるせない思いがあった。


「大丈夫よ。君の判断は間違いじゃないから。」

「そうですよ。それに背負うなら私たちも背負いますから!」


そんな時、雪菜や風華に諭される。その言葉で少しは気が楽になった。


「あぁ、ありがとな。二人とも。」

「もしもし、私を忘れないでくれよー。」


すっかり置いてけぼりのカナタ。自分だって雪菜や風華と同じ気持ちなのだから。


「ハイハイ、わかってるよ。」

「どうだか。話を戻すがアイツらの上位の存在が何をするのか、分からないのが気掛かりだね。」

「ま、当面は奴らは大人しくしてるだろうし、それまでに解決しないとな。」

「次はそうはいかないかもだしな。」

「うん。相手が宗教だからね。」

「そういうのが一番相手しづらいのにぃ…」


妖が発した宗教の教えとは、人間を殺すというモノだった。

それらと関わりを持つ存在が近くにいる。それは事実だ。それに風華は思わずは頭を抑えた。


「何にせよ、近いうちにデカいヤマに当たるなよなぁ。」

「それでも、無駄な殺生だけはしたくない… なんて言ってられないか…」


誡斗のその思いに、3人は無言で頷いた。

彼らを照らす夕日も、どこか悲しげに見えた






時刻は18時を周り、辺りが暗くなって来た頃、双帰亭に帰って来た誡斗達。そんな彼らが見た光景が…


「…」

「…」

「ちょっとー! なんか反応しなさいよ!」

「ちょっ!姉貴! 騒ぐなって!」

「おかえりニャ〜。みんニャ。」


エプロン姿の少年と少女がひたすら縦7㎝横3㎝高さ1.5㎝の木製ブロック(いわゆるジェン○ブロック)を逆ピラミッド状に積み上げているところだった。


「いや〜、随分楽しそーだなって。」

「楽しい訳あるかッ! 昼からずっとコレだぞ!」

「だぁ〜〜ッ!! 姉貴!静かにしてくれ!」

「寝坊するからだよ。叶芽、ワタル君。」

「いつもの事だけど、まぁガンバレ。」


カナタに揶揄われる二人。少女はカナタに向け怒り、少年は姉に対して怒る。

この二人は誡斗達が朝食を摂っていた時にまだ寝ていた者たち。天津風のメンバーであり、姉の「紫空(しぞら) 叶芽(かなめ)」、弟の「紫空(しぞら) ワタル」という姉弟である。


どうやら朝寝坊に対する[お仕置き]を受けている模様。

とは言えこの光景はいつもの事らしく、雪菜や誡斗は呆れつつも応援する。


「ニャハハッ。寝坊助さん方、あと3分で作らニャいと追加の[お仕置き]だニャ〜♪」

「「最悪だ〜〜ッ!!」」

『アハハハハハッ!!」


そんなこんなで笑いながらも応援し、次なる戦いに備えてひと時の休みに入るのだった。




*****




満月が照らす夜、月土連邦の国境に程近いとある山間に彼はいた。


修験者の服装をしているがその額には2本の角が生えている。

さらに特徴的なのが自身の胴体より長いその「脚」である。


彼は目を閉じ地面とは一段程高い岩の上で座禅を組んでいる。風が吹き木の葉が舞う中、彼は眉一つ動かさず座禅を組み続ける。




「ここに居たかぁ。探したぜぇ、相棒。」


そこに現れたのは動きを阻害しない程度の鎧に身を包んだ男。

ただし額には1本の鋭い角が生えており、彼の「腕」は自身の身体より長く、脚ではなく腕を使い歩いている。


「誰かと思えば、お前か…」

「よく言うぜぇ。分かってたクセによぉ。」


座禅を解き、声を掛けた男の方を向き脚を地面につける。だが膝の位置は頭を超える高さにある。

明らかに人間では無いこの二人、間違いなく妖である。こんな夜の山間で何をしているのだろうか。




「そろそろ移動しようぜぇ『桂践』。早くしねぇと間に合わねぇ。」

「…慌てるな『香迅』。まだ間に合う。」


脚の長い妖は「桂践(けいせん)」と、腕の長い妖は「香迅(きょうじん)」と、それぞれ呼ばれ合った。

妖は普通、名前を持たないばかりか言葉を喋る事もない。

ある程度強い個体のみ言葉を発する事ができ、名前を持つ個体などほんの一握りなのだ。中には例外もあるが、彼等はその例外には当て嵌まらなさそうだ。

そして香迅は先程の会話の中で間に合わないと言った。どこかを目指しているようだがどこに向かっているのだろうか。


「奴等は明朝に出発する。だが俺達の目的地はそう遠くは無い。慌てず騒がず、動けばいい。」

「ま、そうだなぁ。しかし久しぶりに暴れられるとなると、滾ってくるねぇ!」

「否定はしないが、無茶はするなよ。この時の為に多くの同士を募ったのだからな。」

「勿論さぁ。それに、全てはあの御方の為…」




「「全ては、我等が『神』の為!」」




そう言うと彼等は移動を開始した。

あの御方… 神… 気になる単語だらけだが、彼等は何かしらの目的があるのは明白だ。


多くの謎を残しつつ、夜は更けていく。





読んで頂きありがとうございます!


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よろしければブックマークも押して、今後も物語にお付き合いいただければ幸いです。


至らぬ点もありますでしょうが、出来る限り皆様のご期待に応えられる様、精進させて頂きますのでどうかよろしくお願いします!




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